第22話 マリ……スマッシュカート10で勝負!


 俺は風呂を出て、悠亜が怒ってないことを祈りながら部屋へ戻っていく。

 部屋に戻ると悠亜はスマッシュカート10をしていた。


「あれ? FPSやんないの?」

「空が来てるのにわざわざ一人でゲームなんてしないよ」

「そりゃそうだな」


 悠亜の家にはFPSできるゲーム機が一つしかないためFPSは一人しかできない。

 けどスマッシュカート10ならゲーム機一つで複数人できる。


「空もやるよね?」

「もちろん」

「負けた方はどうする?」

「ご自由にどうぞ。どうせ俺が勝つし!」


 悠亜はニヤリと笑って罰ゲームを決めた。


「じゃあ負けた方は一つ言うことを聞くってことで」


 俺だってこのゲームは100時間ぐらいシリーズ通してやってんだ。

 負けねぇぞ。


 そして勝敗が決した。

 結果は惨敗。

 一回も勝てないんだが……。


「ふふーん! 私に勝とうなんて10年早いよニュービー」

「俺の知ってるスマッシュカートと全然違うんだが?」

「どのシリーズやってたの?」

「1と8」

「そりゃダメだよ。今のスマッシュカートはだいぶ進化してるんだから。賭け事する前にそれぐらい勉強しときなよー」


 ごもっともで。

 いや、結果はわかってたよ?

 ゲーマーの悠亜にちょっと齧ったくらいの俺が勝てるわけないって。


 え?

 やる前負けないとか言ってなかったかって?

 そりゃやる前から諦めるバカがどこにいるよ。

 まあ諦めなくても負けるんですがね。


「じゃあ命令は……」


 悠亜はノリノリで考えていた。

 嫌な予感しかしない……。

 どうか、まともな命令でありますように。

 てかまともな命令ってなんだよ。


「ちょっと悠亜さん? えっちなことはダメですよ?」


 俺がそう冗談めかして言うと悠亜は真っ赤になって言い返してきた。


「え、えっちなことなんて命令するわけないじゃん!! だいたい私は無理矢理じゃなくてお互いハッピーな気持ちで……って何言わせるの!」


 え、いま自分で誤爆しませんでしたか?

 苦笑する俺を置いて悠亜はまた考え始めた。


「うん、決めた!」


 さあさあ、どんな命令かじっくりねっとり根掘り葉掘り聞こうじゃないか!


「命令は……一緒に寝よ!」

「…………は?」


 今なんて言ったこのビッチ。

 ビッチはダメだ。


「え、聞いてた?」


 不思議そうにこちらを見てきたから不思議そうに返すと悠亜はもう一度言ってくれた。


「一緒に! 寝よ!」


 よし、はっきりと聞こえたぞー。

 えっちなことだな。

 えっちなことはダメって言ったのにしょうがないやつだなー。

 もちろんやりませんが。

 やるわけないでしょう。

 けど一応確認。


「えっちなことじゃないよね?」

「え、何言ってんの、そんなわけないじゃんー。普通に一緒のベッドで寝よって言ってるだけじゃん」


 よかったー。


「了解OK畏まりました」

「わかればよろしい!」


 はぁ……。

 今夜は眠れるだろうか……。


「それともう一つ! やらないといけないことについて教えて」


 そう言った悠亜の顔はどこまでも真剣だった。

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