第21話 輝いてる空
しばらくして、全国大会の決勝前日。
三人で帰ってる途中、事故にあった。
私は何もなかったけど、海斗を助けた空は大好きなサッカーができなくなるどころか普通の生活に戻れるかすらわからない大怪我をして、絶望へと突き落とされていた。
なのに、何でか。
みんなが見舞いに行くといつだって笑顔で過ごしていた。
まるで私たちを不安にさせないかのように。
それと強がりにも見えた。
悔しさも、苦しみも、絶望も、涙も全て一人で抱え込もうとしているように。
私はみんなが帰った後、忘れ物をしたので空の病室に行った時があったんだけど。
行くと空の目から涙が溢れていた。
「なんで、なんで俺が……これからだってのに……」
私はいつもの明るい空しか知らなかった。
だから、その時やっぱり空も私たちと同じなんだなって思った。
傷ついて悲しんで悔しんで苦しんで。
空……やっぱり辛いんだろうな。
泣いている空に私は話しかけることができなかった。
だってこんな空は初めてだったから。
何ヶ月か経った冬のある日、私がお見舞いに行くと空は担当の医師に質問していた。
「俺はサッカーができるようになりますか?」
震えるように聞こえるその声。
この答えで何かを決めようとしている。
私には、できないと思った。
まだ身体のあちこちに包帯を巻いている姿からは全くサッカーをしている姿を想像できなかったから。
けど、空の質問に医師は穏やかな顔で答えた。
「僕が無理って言ったら君は諦めるのかい?」
その答えは空に希望を与えたかのようだった。
「絶対諦めない! 俺は俺の物語の主人公なんでね!」
かっこつけでかっこいい輝いてる空のその言葉にはとても強い意志を感じた。
そしてその時、私は確実に意識したの。
「ああ、私は恋をしたんだ」
そうだよね。
そうだ、私は諦めない空に、いつでも前を向いている空に惚れたんだ。
そして憧れてる。
高校生になった今でもその好きと憧れは変わらず、むしろ増している。
「私は空が大好きなんだ」
そう溢れた言葉は誰にも聞かれることはなく、静かに私の体温を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます