第20話 悠亜side


「もう。馬鹿なんだから!」


 私こと柊悠亜は今、空に下着を見られてとても赤面してる。


 そして少し落ち着いた。


「まあ好きな人に下着を見られるくらいいいけどね! 何なら見て欲しいまである!」


 何言ってんだろ私。

 いつからこんなに好きになったんだっけ。


 そう思って少し昔のことを思い出してみる。


 小学五年生の時。

 私と空と海斗は幼馴染でいつも一緒に過ごしていた。

 今でも三人でよく一緒に過ごすけど、その頃はもう一人一緒にいたんだ。

 音坂 奏。

 私の親友で後にライバルになる亜麻色のサイドテールがよく似合う私と同じくらい可愛い女の子。


 私たち四人はサッカークラブに所属していてチームはあと一勝で全国大会ってところだった。

 そしていつものように遊んで、お泊まり会やバーベキューとかもして楽しく日々を過ごしていた夏が終わりを迎え、全国大会を決める試合が近づいている。


 そんな時、奏ちゃんが私に言ったの。


「私、空くんのこと好きなんだよね」


 それはあまりに唐突で衝撃的だった。

 けどその時の私は二人を応援しようって思ってたんだよね。


「私は全国大会に出場が決まったら告白しようと思ってるんだけど……どう思う?」


 いやもう早く付き合っちゃいなよ!

 なんてツッコミはできなかったけど、ほんと早く付き合って欲しいもんだよね!


 そしてしばらくして、全国大会を決める試合の日。

 

 空が大活躍したんだ。

 いつも馬鹿だなぁとか元気なだけじゃんとか思ってるけど、その時の空はそんな私にもカッコよく輝いて見えたの。


 そして当然その空を奏ちゃんが目にしていなはずもなく、私が気づいた頃には目がハートだった。

 そして二人は全国を決めた後、付き合いだした。


 ようやく付き合ったんだね!

 心の底から嬉しかった。

 二人とも大好きだから。

 その二人が一緒になるなら嬉しなって。

 二人を応援していこうって。


「あっ」


 ズキン。


 何でだろう。

 少し胸が痛んだ。


 それから私たち四人で遊ぶことは少なくなっていった。

 

「ねぇ〜。海斗ひま〜」

「僕に言わないでよ。空とか奏ちゃんとか誘って遊べばいいじゃん」


 付き合い始めてから二人はずっと一緒にいて私なんか構ってくれない。

 とても寂しかった。

 いつも一緒にいたのに。

 そして海斗もそんな気持ちに見えた。 


「僕はさ、二人が楽しいならいいかなって思ってるんだよね」

「私もだよ。二人とも好きだもん」


 いつも私たちは二人に気持ちを伝えない。

 好きで応援したくて、けど寂しくて一緒に過ごしたいなんて。

 簡単に言葉にできそうになかったから。


 そんな時、奏ちゃんが急に転校したんだ。

 悲しみと寂しさと怒りと、ほんの少しの安堵。

 そして私は私が嫌いになった。


 それから空は少し元気がなくなってるように見えたけど、私は何も言えなかった。

 そして忘れた。

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