第19話 カッコつけをみられたら。

 俺は昔した宣言を最高にカッコつけて拳を天井に突き上げていた。

 

 そんな俺は今最高に恥ずかしがっている。

 そして笑われている。


「ふふっ。空っっカッコつけすぎでしょ! 恥ずかしくないの?」

 

 ドアがすでに開いていて悠亜に笑われている。

 あーーーーもーーーーっ!

 最悪!


「えーと、悠亜さん? どこから見てました?」


 俺は恥ずかしいと思う心を精一杯隠しながらニコッと笑顔で聞いた。

 焦らない、それがイケメン!


「気になる? 私がどこから聞いてたか」

 

 悠亜はニヤニヤと聞き返してきた。

 こいつ、自分が優位だからって調子乗ってんなー。

 コノヤロウ。


「はいはい、聞きたいですよ。教えてください」

「ちぇーつまんなーい。まぁいいけど。えーと私が聞いてたのは、『俺が絶対主人公になってやる』って自信満々に言ってたところかな」


 彼女は平然と言った。

 そりゃそうだろう。

 彼女ではなく恥ずかしいのは俺なのだから。


 あ、まじか。

 恥ずかしいいいいいいいいいいいい!!!!!


 俺にだって羞恥心ぐらいあるんですよ!?

 盗み聞かないでもらえます?!


 あっいや、ここ悠亜の部屋だから10:0で俺が悪いじゃん。


 あーやっちまった……。

 あーあ。


 そんな風に俺が悶えてると、「そんな恥ずかしいことかな? いつもの空じゃん」って馬鹿にされました怒ります!


 少し間を置いて悠亜が口を開いた。


「けどさ、カッコよかったよ。正直!」


 え、何言ってんの悠亜。

 ないない。

 俺が可哀想なやつだからしょうがなく言ってくれてるだけだろ。

 うん、そうだ。


「とりあえずお風呂空きました? 入ります」


 精一杯のごまかし……聞いてくれ。

 お前はちょろイン並にちょろいはずだろ。


「空いてるよー。お母さんは一番最初に入ったし、お父さんは仕事でいないし」


 助かった……さすちょろイン。


 このままあの話してたら恥ずかしさで死んでたな。

 ほんと助かった。


「じゃ、風呂入ってくるわ」

「バスタオル忘れないでねー。そこの引き出しの3段目だよ」


 悠亜は俺のすぐ横にあるタンスに指さした。

 そして言われたとおり上から3段目を開けた。

 

「え、待ってそこはだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 悠亜が叫びながら抱きついてきた。

 正確にはタンスから引き離そうとしてるんだろうけど。

 

「え、あ、あー僕は何も見てないです」

 精一杯のごまかし……。

「嘘つかない! 見たでしょ!」

 

 今回は、ちょろくなかった……下着たくさん入ってたね。


「信じられない! いくら大好きな女の子の下着だからってダメだよ!」


 そう悠亜は言った。

 確かに、俺が故意に開けたなら俺が悪いだろう。

 でもな!


「俺は悠亜に3段目を開けてって言われたから開けたまでだ!」


 腕を組んで自信満々に答えてやった。

 多分漫画なら背景にドーン! って文字出てるだろうな。

 あっほら、主人公みたいじゃん。

 ドーン! って出たら。


「上からじゃなくてしたから3段目っ!」


 悠亜は顔を真っ赤にしている。

 また誤魔化そ、頼むちょろイン。


「まあ、今回はなかったことにしようぜ。これは事故だ」


 悠亜は少し悩んでいた。 

 確かにとかうーんって唸ったりしながら。

 やっぱちょろイン。


「ということで風呂行ってきます」


 下から3段目からタオルを取っていそいそと部屋を出る。

 そして階段を駆け降りた。


「あっ空っ! 逃げるなーー!」


 ごめんなさい。

 俺は逃げます。

 後は時間がなんとかしてくれるでしょう。

 どうか時間さんお願いします。

 

 そう思いながら俺は風呂へと直行した。

「さて長風呂するか」


 時間さん頼んだ!

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