第11話 可愛い女の子と恥ずかしさ


「なあ悠亜」

「フンッ」

「なあ機嫌直してくれよー」

「フン」


 どうしよう。

 どうすれば機嫌直してもらえるんだろうか。

 あ。

 そうだ。


「なあ悠亜」

「フン、空なんて知らないっ!」

「怒ったらかわいい顔が台無しだぞ?」


 俺はできるだけ、かっこよく聞こえる声で言った。

 俺の精一杯。


「え……っ」


 彼女の顔が赤くなった。


「何で……」

「ん?」


 ワナワナと震える彼女に対して俺は何を言いたいかわからなかった。

 だから疑問系で聞き返してしまった。


「何で今そんなこと言うの!」


 何でって?

 そんなの決まってる。


「悠亜が可愛いからに決まってるじゃん」


キリッ!

 決まったぜ。

 

 それで悠亜の反応はと……顔がトマトのように赤くなってんじゃん!

 両手を頬に当てて体をくねくねさせてるし。

 やばいほど可愛い。

 自分の好きな女の子が自分に対して照れてるのを見ると楽しいな。

 そう思いながら俺は悠亜を眺めていた。

 正確には見惚れていたと言うのが正しいだろう。

 そんな俺に眺められている彼女は五分経ってもくねくねしていた。


「おーい、悠亜さん?」


 反応はない。


「おーい」


 次は床にゴロゴロし始めた。

 悠亜は自分の世界に入っているんだろう。


「えへへ……可愛いだってー」


 ずっと一人でつぶやいている。

 もはやこのままそっとしておくべきなのかとも思うほどに可愛かった。


「えへへー」

「空が私に可愛いってー」


 しばらくそばで見ていた。

 しかし悠亜の呟く言葉がだんだん恥ずかしく思えてきた。

 俺の頬も次第に赤く熟れていきトマトみたいになっていただろう。


「おいっ。悠亜! 恥ずかしいだろ!」

「えへへーこのまま空とーキスしてあんなことやこんなことを〜」


 流石にそれ以上は恥ずかしさで沸騰する!

 そう思い俺は彼女の方を持ち大きく揺さぶった。


「現実に帰ってこい! 悠亜!」

「はっ!!」


 よし、現実に帰ってきたか。


「あれっ? 私何してた?!」

「くねくねしたり、ゴロゴロしたり恥ずかしいことを言ったりしてたぞ」


 そう言った瞬間彼女の頭は爆発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る