第8話 サッカー部4

 快晴の中、試合開始のホイッスルが鳴った。

 キックオフだ。


 俺はツートップのうちの一人。

 海斗はトップ下だ。

 黄ボールで試合は始まった。


「海斗! 作戦七! いくぞ!」


 そう言ってキックオフ後、海斗にパスをした。


「しっかり決めてよ!」


 そして海斗がドリブルを始めた。

 一人二人と緩急のつけたドリブルで抜いて三人目はサイドステップからの股抜き。

 三人を抜いたところで歓声があがった。


「あいつもすごいな!」

「さすが日本代表だな」

「あいつはどうなんだろな」


 ギャラリーたちが盛り上がりつつ、次は俺の番だと言うことを自覚させられる。


「そろそろいくよ! 空!」


 海斗からアイコンタクトが送られる。

 待ってたよ。

 こっからは俺のターンだ!


 俺はディフェンスの視界から一瞬で消え、そしてディフェンスの背後に飛び出した。

 そしてその飛び出した位置にドンピシャで海斗からのパスが届く。

 海斗の出したパスは綺麗な弧を描いて曲がり俺の足元へピタッと来た。

 完璧だ。


「さすがだな!」

「トーゼン!」


 そしてそのパスを受けた時点でディフェンスは一人だけ。

 1対1だ。


「行かせない!」


 そう言ってディフェンスが詰めてきた。

 その瞬間俺はディフェンスの背後スペースにボールを蹴り込んだ。


「何やってんだ、それじゃコートの外に出るぞ」

「ミスか?」

「なんだ期待外れか」


 ギャラリーが次々に言った。

 まぁそう見えるよな。

 でもこんなミス俺がするわけないだろう?

 どれだけ練習したと思ってんだ。

 俺の蹴り込んだボールはとてつもないバックスピンでディフェンスの横を走り抜けた俺の足元へと戻ってきた。


「なんだあれ?!」

「狙ってやったのか?!」

「だとしたらやばいぞ!」

 ギャラリーの驚く顔。


「これが小学校の頃俺らの代で有名だった吸い付く天才的ドリブルか……」


 俺に抜かれたディフェンスがそう呟いていた。


「すごいなお前」


 その言ったディフェンスの言葉を聞きながら、思いっきり振りかぶって俺はシュートを放った。


 そしてその後も得点は量産され12対3で黄チームこと俺らが紅白戦に勝利した。



 そしてその日のうちに俺と海斗、そして景山がAチームへの昇格を決めた。


「やったね、空」

「あぁ」


 俺たちは拳を突き出してグータッチ。

 計画していた通りだ。


「このままAチームでやってこう」

「もちろん」


 これからが本番だ。

 俺たちが全国メンバーのレギュラーになるんだ。

 絶対なってやる。


 そして部活が終わり、着替えていると電話が鳴った。

『空ーー! すぐにヨンゼに集合ねーー!』

 プツ。

 相変わらずだな悠亜は。

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