第6話 サッカー部2

 監督の挨拶が終わった後、俺たち新入生は自己紹介をするよう言われた。


景山かげやま 隆一りゅういち。12組。ポジションはフォワード!よろしくお願いします」

三島みしま 光輝こうき。12組。ポジションはトップ下。よろしくお願いします」

蒼海あおみ 竜馬りゅうま。12組。ポジションはセンターバック。よろしくお願いします」


 その後も順々と自己紹介は終わっていき、ついに俺の番が回ってきた。

 おっし、気合い入れてアピールしますか!


「黒咲 空! 11組。ポジションはフォワード! 希望番号は10番です! よろしくお願いしまーす!」


 俺の自己紹介が終わると周りがざわめいた。


「なんだあいつ。調子乗ってんな」

「馬鹿なのかあいつ」


 俺のことを馬鹿にする言葉が飛び交う。

 背番号10はチームのエース番号。

 それを欲しいと高らかに言う俺は周りから見ればというか、一般的に見れば調子に乗っているんだろう。

 そんな中で俺の過去を知っているものが騒ぎ始める。


「あれっ? 黒咲? 黒咲ってもしかして元Uー12ナショナルトレセンの黒咲 空?!」

「え? まじで?」


 そして周りが騒いでいるとコーチが次の人に自己紹介を促した。


「騒ぐなー。次のやつ、自己紹介しろ」

「は、はい!」


 俺の次は海斗だ。


「一条 海斗。11組。ポジションはミッドフィルダー、主にトップ下です! よろしくお願いします」


 海斗の自己紹介が終わるとまた周りがざわめいた。


「もしかして一条海斗って元Uー15日本代表の一条海斗?!」

「やばすぎだろ!」

「黒咲と一条の二人がいれば全国なんて楽勝なんじゃね?」


 楽勝じゃないだろ。

 そして周りが騒いでいる中一人の男が口を開いた。


「一条はともかく黒咲はダメだろ。そりゃUー12の時はうまかったんだろうよ。でもここ最近の三年間、黒咲なんて名前待ったく聞かなかったぜ」

「そうだそうだ。中学の時に日本代表に選ばれてないってことはそう言うことだろ」


 景山と蒼海。

 サッカー漫画に出てくる嫌味なやつか。

 まぁその通りすぎるんだけどな。


「お前ら騒ぐな! 残りの自己紹介早くしろ」


 コーチが怒ったことで再び自己紹介が始まった。



 そして自己紹介が終わると、次は一年だけで紅白戦をするらしい。


「この試合で活躍したものはAチームに上げるぞ。しっかりとアピールしろー」


 チームはビブスで分けられ、赤、青、黄、緑の4チーム。

 5対5のフットサルコートサイズでやるミニゲーム。

 組順にビブスを配られため俺と海斗は同じ黄チームだ。


「やったね。同じチームだ」


 これなら完璧なアピールができるな。

 チーム分けが終わり、俺たちはそれぞれアップを開始した。



 アップ中、俺と海斗はある打ち合わせをしていた。


「どうする空。どの作戦でいく?」


 俺と海斗には十の作戦がある。

 実践的なのから魅せプレイまで種類豊富だ。

 俺はその中から魅せプレイでありつつ、自分の技術をアピールできる作戦を選んだ。


「作戦は七でいこう」

「オーケー、七だね。あれって結構きついんだよ。パスの回転から何から何まで気をつけないとダメだし」

「まあまあ、期待してるぞ相棒っ!」


 俺が言い終わると同時に海斗に強いパスを出すとそれをすんなりトラップして軽く返してきた。


「そうだね。これまで相当頑張ってきたんだ。しっかりとやらないとね!」


 俺たちはアップしながらの作戦会議を終え、赤と青チームがしている紅白戦に目をやった。

 すると一人の選手が相手チームを手玉取っていた。

 景山だ。


「あいつすげーぞ! 一人で全員抜きやがった!」


 ギャラリーが騒いでいる。

 どれどれ、俺にあんなこと言ったんだ。

 張り合いがいのあるくらい上手くないと困るぞ。

 そう思いながら俺はアップをやめて、景山のプレーを見ることにした。

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