第4話 やるべきこと


「じゃ、HR終わるぞー」

 先生のその言葉でHRが終わり、周りがガヤガヤするようになった。

 そして俺が授業の用意のために廊下に出ると平澤先生が話しかけてきた。


「ところで黒咲、ほんとのところどうなんだ?」


 さっきのことか。

 しつこいなぁ。


「まあまあそんな嫌な顔なんかせずに答えてくれよー」


 しょうがないな。

 答えるか。

 答えないといつまでも聞いてくるし。


「男は守備範囲外です。せめて男の娘でも連れてきてください」


 俺がふてぶてしく答えると先生は「ん?」って顔をしていた。


「そのことじゃないんだけどなー」

「じゃあなんのことですか」


 そう聞くと先生は少し真面目な顔をした。


「君の周りに集まる女の子たちについてだよ」


 そのことか……。

 そのことに関してはすでに答えが出ていることを知っているくせに。


「先生。俺はみんなのことが好きだけど今は誰とも付き合うつもりはないよ。先生は中学の時に俺が一度三人を振ったことを知ってるでしょ」


 俺は中学の時に三人……悠亜、春、未羽の三人に告白された。

 嬉しかった。

 今までも何度も告白されてきたけどそれと比べ物にならないくらい。

 それくらい好きで大切な三人。


 だけど俺にはやるべきことがあった。

 いや、今もある。

 やらなきゃいけないことが……。

 だから俺はその時に三人に向けて言った。


「気持ちは嬉しいし付き合いたい。でも今は無理なんだ。やることがある。だからごめん」


 ちなみにそれを先生と海斗、そして蓮はそれを覗き見していたので知っている。


「けどお前、まだ三人に言い寄られているだろ?」


 そうだ。

 三人のことを振ったはずなのに未だに好きとか愛してると言ってくる。

 多分だけど俺が『今は無理』と言ったのが原因。

 『今は』と言うことは今じゃなければ可能性があると言うこととも取れる。

 だからだろう。

 今は無理でも言い続けてやることが終われば可能性あるんじゃねって感じかな。

 まぁ俺はあいつらのこと好きだから可能性は全然ある。


「あいつらもイバラの道を選ぶよなー。こんな拗らせためんどくさいやつを好きになるなんてな」

「それは本人のいないところで言ってもらえますかね」

「まぁ今はってことはいずれ向き合うってことだろ」


 やっぱそう思うよな。


「そうですね。今は無理ですがいずれ……ね。やるべきことを終えればですが」


 正直なところ俺のやるべきことはいつ終えることができるかわからない。

 だからあいつらとはいずれなんらかの形で向き合わないといけないと思っている。

 けど今じゃない。

 それはわかる。


「今じゃなくてもいい。今じゃなくてもいいからあいつらのことを大切に思っているならちゃんと向き合ってあげるんだぞ」


 先生は念を押すように言った。


「わかってますよ」


 俺がそう言うと満足そうに頷き「じゃ、ちゃんと授業受けるんだぞー」とだけ言って、今にもスキップしそうな足取りで去っていった。

 あの人なんで人生=彼氏いない歴なんだろ。

 すごくいい人なのにな。

 俺はその謎について少し考えた後、めんどくさくなってきたので考えるのをやめて授業に集中することにした。

 ほんとなんでだろなって疑問を残して。

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