是里愛香

 以下に記載する情報の特性上、本名は伏せる。登場する人物は全て仮名である。読者諸君の好きな人物を当てて読んでほしい。


 最初に言っておくと彼女はそれほど変人ではない。いや、彼女の人格自体は聖人と言っても過言ではなかろう。常識人であるばかりか無遠慮な態度にも優しく接する。よってこの奇人伝に記載するか、新聞部では激しく議論が交わされたが自他ともに認めるのおっぱい星人の田中星人(こう書くとややこしいが)が押し切った。以下は田中星人による。


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 春風駘蕩、徳量寛大、我が校の聖女たる是里愛香も、しかし身体に特徴があった。度を超えた巨乳なのである。


 巨乳と爆乳の違いについての議論は男子諸君の間で盛んに行われているがここでは割愛する。彼女は巨乳であり爆乳なのである。およそ全ての乳を包括する乳である。


 彼女がどんな乳を持っているかについて語るにはまず「柏木哲太狙撃事件」について記載する必要があるだろう。


 我々高校生の身体発育の速度は性別を問わず目を見張るものがある。それは是里さんにおいても変わりない。


 彼女は短期間で胸が成長したのだろう。シャツのサイズが明らかに合っていない時期があった。はち切れんばかり、悲鳴を上げているシャツを見て、男子諸君が下品な目線を向けていたのは想像に難くない。


 そんな男子の内の一人、野球部のエースこと柏木哲太くんがプリントを手渡すフリをして彼女の胸を注視していた際、その事件は起きた。


 シャツの前が弾けたのである。放たれたボタンは一直線に飛び胸を直視していた柏木くんの目玉を直撃した。当然ながら柏木くんはムスカ大佐の如く悶絶する。


 この際是里さんのフロントホック(推定)の下着も損壊したらしく、インナーを着ていなければ彼女はトラウマものの羞恥を晒すところだったが、幸いにして彼女の隣に座っていた皆川由紀さんが是里さんの胸を教科書で隠したので大事には至らなかった。しかし男子の心理を突いた巧妙な狙撃事件に、誰もが震え上がったのは言うまでもない。


 この事件について柏木くんは以下のように語っている。


「確かに胸部を見ていた。しかし本音を述べるなら皆川さんは後二秒早く教科書を出して欲しかった」


 この事件は本校の制服がブレザーであるが故に発生したのであるが、ではセーラー服なら問題なかったのかというとそうでもないようである。


 是里さんは吹奏楽部に所属していた。演奏会の関係で他校に行った際、その学校の女子と本校女子とで制服を交換してみようという話になったらしい。セーラー服とブレザーとを交換したのだ。これを見ていた吹奏楽部男子、遠藤くんはこう述べている。


「あれは『セーラー服と機関銃』どころじゃなかったね。『セーラー服とグレネード』くらいの威力があった。僕? 被爆したよ」


 彼女のセーラー服姿がどれだけの威力を持つかはフェルミ推定を以ってしても測定不可能だろう。吹奏楽部男子に向けられた理不尽な暴力である。当然ながら証拠画像の提出が各方面から求められたが誰一人としてそれには応じなかった。故に、是里さんのセーラー服姿はチュパカブラ同様UMAとして扱われており、吹奏楽部男子はその性欲のあまり幻覚を見たのだという扱いになったどころか、彼らは性欲の権化、変態の集まりにして性のフロンティアという不名誉にまで及んだほどである。


 しかし彼女のセーラー服姿以上に存在を怪しまれているものがある。それはスクール水着姿である。


 これは本校物理情報学部が算出した結果であるが、是里さんの乳房はスクール水着で完全に隠すことは不可能だそうである。仮に彼女の胸を隠そうとした場合、一般的な男子の着用するボクサーパンツ三枚分の布が必要であるそうだ。つまり一般的なスクール水着では乳がはみ出る。


 花の女子高生がそんな破廉恥な姿を晒すはずがない。如何に女子しかいない水泳の授業であれ、彼女がスクール水着を着用できないことは明白である。褌で泳ぐとでも言うのだろうか。それはそれで見てみたい。


 また彼女の胸部はそれ相応の水の抵抗を受けることが推定される。仮に彼女が二十五メートルプールを泳ぎ切るとすれば一般的な女子の三倍の筋力が必要だそうだという仮説がある(本校物理情報学部による)。


 ところがこの仮説を裏付けるデータがある。彼女は十キログラムのチューバを片手で易々と持ち上げるそうである。聞くところによると吹奏楽部男子は彼女に軽く担がれるそうだ。無論これもUFO目撃情報のような扱いになるのだが、しかしアメリカ各地で目撃情報があるように、この手の報告は各方面から上がってくる。彼女は怪乳にして怪力女子なのだ。


 彼女の悩みとして、その大き過ぎる乳房のせいで「足元が見えない」というものがあるそうである。故に階段を降りる際はそれなりの覚悟が必要だそうだ。おそらく、彼女は本校の階段の段数をほとんど記憶しているのだろう。そうでなければ目視不可能な階段を降りることができないはずだからである。


 この説は各方面女子も首肯する。実際バスケットボール二つを抱えて階段を降りてみたが恐怖の方が勝った。真におそるべくは、彼女のその胸の奥の胆力であろう。


 無論、これは噂に過ぎない。

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