【連載版】長年引きこもっていた屋敷から「お前の研究はもう必要ない」と追放されたので大賢者の正統後継者として自由に生きて行く事にします〜気が付いたら弟子に告白され、師匠を超える大賢者になっていました〜
第82話 帝国、王国、神聖国、そして魔法統率協会
第82話 帝国、王国、神聖国、そして魔法統率協会
「リベア。わたしの他にいる全属性魔法の使い手について知っていたら教えてください」
倉庫からリビングに行くまでの短い移動時間。わたしは弟子に今正式に認定されている全属性使いの事を聞いてみました。
彼女なら多少知っているでしょう。
引きこもり時代、外部の情報を完全に遮断していたわたしと違って、ソフィーは毎日新しい情報に触れていました。
そんなソフィーに頼んでリベアは近年に起きた政治、経済、その他諸々の事象を勉強していましたから。
「はい、もちろんです! まずはスカーレット帝国に一人。これは帝国の第二王女様ですね! この方は帝国皇室には珍しく民の事を第一に考えているお方で、近年帝国が行なっている侵略戦争にも否定的な考えをお持ちのようです。映像石でそのお顔をご拝見致しましたが、とても気品溢れるお方で民衆の支持が厚いのも頷けました!」
「ふむ、帝国の皇女様ですか。帝国は自分達の土地が広く豊かである事を生かして、ところ構わず戦争を仕掛ける野蛮な国という印象ですね。実際その豊富な資源と鍛え抜かれた屈強な兵士達に平伏し、帝国の属国になる小国が最近多発しています。同じくらいの広土を持っている王国も無関係ではいられません。ほんと世界征服でも目指してるんですかね? それと力を持っているのが第二皇女というのも立場的に危ういですねぇ」
帝国と王国はそれこそ魔族との戦争時には大国同士手を結んだものの、魔王のいなくなった今、その脅威はなく、帝国はこれ以上王国と手を取り合うつもりはないようです。
自国の復興と再編が終わり次第、再び戦火を巻き起こそうと帝国の首脳陣は考えているようですね。周辺国を攻めているのはその土壌作りでしょう。
(師匠から聞いた話では、もし魔族が本格的に攻めてきてなかったら当時疲弊していた王国は帝国に勝てなかったと言っていました。帝国からすれば王国クラスの大国を取り込めば勝ったも同然ですからね)
もし帝国がわたしの生きてる間に本格的に戦争を仕掛けてきたらどうするべきか。
ええ、そうなった時は決まっています。国から逃げちゃえばいいんです。だってわたし、王国に住んでますけど、バカ師匠のせいで住民登録されてませんから。
(でもその方が身軽でよかったですね。そればかりは師匠に感謝です。身一つで国を出れるんですから。この村は王国の端っこですし、戦争になっても狙われないと思いますが……最悪の場合は……です)
でもまあ、今のわたしに弟子を置いて逃げるという選択肢はないんですけど。ごめんなさい師匠。きっとわたしの特殊な身を案じてこういった身分にしてもらっていたのに……。
ですが師匠だって、絶対わたしを見捨てて置いていったりしなかったと思いますから。お互い様です。
「ししょう?」
ハッと気が付けばわたしはリベアの頭を撫でており、弟子は困惑しておいででした。今真面目な話をしてる最中でしたね。失敬失敬。
慌てて頭から手を離し、話の続きを促します。
「ええと、では続けますね。二人目の方は神聖国におられる老紳士様なんですが、既に現役は引退した身で人里離れた山奥に住んで隠居生活を楽しんでいるとの事です」
「成る程。神聖国は温厚な国ですし、国の有事の際でもない限り彼が戻ってくる事はなさそうですね。それで最後のお一人は?」
「はい。三人目のお方は魔法統率協会所属の少女。ソフィーさんによると私たちと歳はそう変わらないそうです。師匠は知ってるかもですけど、統率協会は各国に支部があるみたいなので、少女の生まれはこの国ですが協会に所属している場合は協会の魔法使いという扱いになり戦力としては独立しているんですよ」
オルドスさん辺りなら、少女の詳しい情報も知っているんじゃないですかねーとリベアは可愛らしい動作で小首を傾げます。
「あーそれはわたしも知っています。国に仕えるか、協会に所属するか、はたまたフリーを選択するかを選ぶんですよね」
魔法使いの常識の一つとして、わたしも師匠から座学の一環で教わりました。見習いから試験に合格して一人前として認められた後、自国に仕えるか協会に所属するか決める事になりますから。
旅人になって各地を回りたいという人ももちろんいますので、そういう人は国にも協会にも所属せず
稀に冒険者ギルドに所属する方もいますね。稀ですけど。殆どの人が国や協会に仕えて仕事をしつつ自分のしたい研究をする事に時間を費やしますから。
魔法使いってわたしも含めて変人が多いですし。
「それにしても詳しいですねリベア。わたしの知らない所でいっぱい勉強したとお見受けします」
「えへへ。師匠の手助けを出来ればと、いっぱいお勉強しましたから!」
ほめてほめて! と擦り寄ってくる弟子を抱き寄せてご褒美をプレゼント。
「ええ、よく頑張りました――頑張ったね、えらいよリベア」
「きゃあ♡」
言葉一つで嬉しそうに頬を染めて顔を隠すリベア。これがちょろインという奴ですね。
そんなこんなで弟子との戯れを楽しみながらリビングに着くと、二人がなにやら言い争っているご様子。
「一体どうしたんですか?」
「あ、聞いてくださいティルラ様。お嬢様がフィアの事は信用できないって言ってるんですよ!」
「信用できないとは言ってないじゃない! ただ少し戦闘面で頼りないなーって思ってるだけよ!!」
「それが信用してないって言ってるようなものじゃないですか!! ティルラ様。どうか今からフィアと一戦交えて下さい! この分からず屋のお嬢様にフィアがどれほど有能か見せつけてやります!」
「あ、うん。分かった」
「ではでは行きましょう!」
わたしはフィアの勢いに押されて模擬戦を受諾し、庭へと連れ出されるのでした。
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