第78話 聞き込み調査開始です!〜人探し用の魔道具を発明しました〜

 愛弟子のお仕置き中、ソフィーも紅茶飲んで英気を養っていたようで、フィアの言っていた通りわたし達が帰ってくる頃にはすっかりいつもの彼女に戻っていました。


 と言うわけで、再び(今度は真面目な)話し合いが開始しました。


「あー、もうだめね! 全然手がかりが見つからない!! リベアちゃんの両親の話によると村からいなくなったのはもう何年も前の事だっていうし、誰も行き先を聞いてないんじゃあねー」

「ごめんなさいソフィーさん。あまりお役に立てなくて……」


「ソフィー。わたしの弟子をいじめないでください」


 ああ、我が弟子がソフィーの八つ当たりの対象に……いたいけな子を虐めるなんて、ほんとソフィーはお人が悪いですね。


 え、わたしもリベアの事を虐めた? 肉体的に? あれはいじめじゃありません。教育です。


 そんな風に思っていると、ソフィーが慌てて「違うのよ!」と言ってテーブルから身を乗り出し、弟子の手を取りやがりました。


「別にリベアちゃんの事を責めている訳じゃないからそんなに落ち込まないで。責めるべきは座ってばかりで何もしていないティルラの方よ!」


 我が友が人差し指でビシッとわたしの事を指差してきたので、わたしは身体を傾けそれから逃れます。


 どこに指を向けてるんですか〜? と。そしたらスッとわたしの方に指先をシフトしやがりました。こんにゃろです。


「ソフィー。わたしの事もいじめないでください」


 虐められる理由なんてわたしには一つもありませんから。あ、一つあるとすれば、わたしがあまりにも可愛すぎて嫉妬してしまった――それなら理由として十分考えられますね。


「は? だってあんたはここ一週間何もしていないでしょうに」

「失敬な。ちゃんと仕事してたじゃないですか。みなさんが集めてきた情報をまとめてそれを分析してたんですよ」


 これは嘘ではありません。ちゃんと整理して頭の中に記憶させましたから。


「ふーん……それで分析の結果は?」


 そう説明しても、ソフィーは訝しげな表情をするだけで信じていらっしゃらないようでした。


 やはり結果を見せて納得させる他ありませんね。


 わたしは立ち上がり、いつものとんがり帽子ではなく、探偵の人が使うような帽子をどこからか持ってきてそれを目深に被ります。


「わたしの推測によると……」

「よるとー!?」


 弟子が側にやってきて、きらきらと目を輝かせます。


 うっ、眩しい。超期待されてる……対してソフィーの冷めた目ときたら。フィアはいつもと同じ柔和な笑みを浮かべていますね。逆に怖い。どう思われてるんでしょう。変な子って思われてたら悲しいですね。


 ま、とりあえず分析の結果を伝えましょうか。


「――話を聞くに夫婦は生きてらっしゃるようなので、この広い大陸のどこかにはいるでしょう。しかーし、この限られた期間で大陸全土を調べる事は困難! であるならばもう手っ取り早くそこらへんの人にお金握らせて父役母役させるのが早いのでは? と考えたりしましたが、姫様が両親のことを憶えているようなのでそれは却下。とするとやはり地道に調べるしかない。というのが数少ない情報を頼りにわたしの下した決断です」


「へ?」


 どういう事? とリベアが首を傾げます。


 うむむ。この子にはちょっと難しかったかもしれませんね。


「……よく分かったわ。あなたが真面目に働いてなかったって事は――」

「あ、わっ。待って下さいソフィー誤解です! 誤解なんです!!」


「誤解〜? 何が誤解なのかしら? 私にも分かるように説明して欲しいわ?」


 やばいやばい。ソフィーが鬼になろうとしてます。リベアもフィアもいつの間にか距離取って互いに身体を密着させて震えてますし、これは不味い!


「第一あなたがこんな依頼を易々と引き受けなかったらこんなに苦労する事はなかったのに……確かに私も目先の利益に飛びついてしまった事もあるけれど、それでも引き受けることを決めた本人が何もしないっていうのは……」


「わー! 悪かったってソフィー。みなさんが聞き取り調査に出向いている間、わたしは新しい魔道具を作っていたんですよ!」

「新しい魔道具? どんな?」


「これです。無属性魔法と光魔法を組み合わせて作った人探し用専用の魔道具です! 世界にたった二つしかない貴重なオリジナル魔道具ですよ!!」


 ふんすっとわたしは三人に比べればない胸を張り、新作魔道具をてってれー! と自分で効果音を付けてアイテム袋の中から取り出しました。


 取り出したのは小型の化粧ケースのような四角い魔道具で、その中心部分には光魔法で作ったコアが煌々と輝いています。


 内部は複雑な無属性魔法の術式で構築されているため、わたし以外……わたしと同じくらい優秀な魔法使いでなければ解析し、再現する事は不可能でしょう。


 わたしがどうだ! と自信たっぷりに腕を組んでいると、ソフィーの視線がチラリと胸に向けられます。


『まだこの子は胸の大小にこだわりを持っているのか……』


 そう言われたような気がして、ちょっとへこむ大賢者でした。

 だってそれは持ってる者だからこそ言える特権のような台詞ですから。


 

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