第6話 爆発に巻き込まれてしまいました

「えっと実はですね……」


 リベアさんがごにょごにょと私の耳に囁きます。どうやら彼女があそこまで驚いたのには理由があったようです。


「はいはい……おぉ、なんと……!?」


 話を聞くと、この町に魔法が使える者が他にいないそうです。まあ、そうですよね。どう見ても田舎ですし。


 魔法が使える人は普通、王都の学校に通いますから。


「それで突如、魔法が使える様になって困っていると」

「はい……」


 なんでもこの子が魔法を使えるようなったのは五ヶ月前からだそうで、木の上から落ちそうになった時、たまたま風魔法が発動したそうです。


 身の危険を感じて、身体が勝手に反応したんでしょうか? どちらにしても、摩訶不思議な話ですね。


「普通は幼い頃に行われる魔法適性で、魔法が使えるかどうか分かるんですが……その時には使えなかったんですね?」


 ちょっと長い沈黙の後に、リベアさんは静かに首を縦に振ります。


「………………はい」


「そうですか……」


 リベアさんが分かりやすく項垂れてしまいました。


 そんなにしょんぼりしないで欲しいです。頭を撫でたくなってしまいますから。


「あの……それで、最近はもうみんなに隠せなくなってきていて」

「ふむふむ」


 彼女によると、その日から段々魔力がみなぎっていき、普段、魔力を抑えているだけでも限界のようです。


 魔力を上手く放出する事も出来ず、最近では身体に不調まで出ているとのこと。


「それは一刻も早く、なんとかしないといけませんねー」


 普通の魔法使いなら、常時魔力を少しずつ放出しているので問題ないんですが、この子は魔力の使い方がわかっていないようなので、このまま我慢し続ければ、魔力が内側から彼女を壊してしまうことでしょう。


 可愛い女の子が命を落とす――それは大賢者として到底見過ごせませんね。


「あの、私はどうすればいいですか……?」


 私の話を聞いたリベアさんは、今にも泣きそうなお顔で問いかけてきます。


 少し話を盛りすぎたでしょうか? 全部、ほんとのことなんですけど。


「では私に向けて魔力を放ってみて下さい。大丈夫です。私は同じ魔法使いなので絶対に怪我したりしないので」


「い、いいんですか?」


「はい。今魔力が漏れそうなのを我慢している状態なので、身体の力を抜いてくだされば、自然と放出されると思います。一応、周囲に被害が出なさそうな場所に移動しましょう」


「は、はい」


 後ろをとてとてとついてくるリベアさんは、今にも限界を迎えそうでした。


 でも、今魔力を放出されたら、人によりますけどこの辺り一帯が消し飛ぶと思うんですよね。


 だって彼女、半年分の魔力を溜め込んでいるみたいですから。


「あ、あのティルラ様」

「はい、なんでしょうか?」


 なんだかモジモジとしていますね。お花でも摘みにいきたいのでしょうか。


「その、限界……です」

「お花を摘みに行くなら、ここで待っていますよ」

「いえ、魔力の方です」


 あ、そっちの方でしたか。


 言うが早いか、彼女の身体が輝き出します。溜め込んでいた魔力を一気に解放するみたいです。


 辺りを見渡します。人もいないし、近くに建物もないので緊急の場所としては及第点でしょう。


 そんな事を考えている内に、「ああ、もう我慢の限界ですぅーー!!」と一瞬恍惚な表情を浮かべた後、爆発しました。


 なんだか私より年下の女の子の筈なのに、えっちだったです。決して、彼女の胸が大きいからだったとかではありません。


「あ、思ったより、すこ――」


 彼女を中心として、半径五メートル以内に爆発が起きます。想定以上の魔力の波に、わたしの身体は爆煙に呑まれていきました。

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