第130話 ……これが、僕の答えです
「…………」
「…………」
ゼロ距離にある死神さんの顔。花のように甘い香り。柔らかい唇の感触。
まるで時間の流れを感じません。止まっているのか、進んでいるのか。そんなことどうでもよくなるくらい、僕は、死神さんと、ずっと……。
「……ぷは!」
突然、そんな声とともに、死神さんの顔が離れていきます。どうやら、ずっと息を止めていたのでしょう。死神さんは、苦しそうに、ハアハアと肩で息をしていました。その顔は、今にも湯気が出そうなほど真っ赤になっています。
「き、君……きゅ、急に……何で……べ、別に嫌とかじゃなくて、むしろ……って、そ、そうじゃなくて……」
「死神さん」
「ひゃ、ひゃい!」
「……これが、僕の答えです」
僕は、死神さんに向かって、はっきりとそう告げました。
死神さんと結婚するのが迷惑? 死神さんと一緒にいるのが迷惑? そんなこと、あるわけないじゃないですか。死神さんは、僕にとって、世界で一番大切な人なんですから。
僕の言葉に、死神さんは大きく目を見開きました。驚きの表情で僕を見つめながら、パクパクと口を動かしています。今、死神さんの頭の中には、どんな言葉が浮かんでいるのでしょうか。
自分の心臓の音が耳に響きます。うるさくて、煩わしくて。それでも、どこか心地よくて。
どれくらい時間が経った頃でしょうか。不意に、死神さんがスッとその目を閉じました。そして……。
「もう一回」
「……へ?」
「もう一回、君の答え、聞かせて」
きっと、死神さんは、僕の答えをちゃんと理解しているのでしょう。それでも……。
「……はい」
僕は、そう言って頷き、死神さんをゆっくりと抱きしめました。それに応じるように、死神さんの手が、僕の背中に回されます。
「大好き……だよ」
「僕も、大好きです」
その温かさを全身に感じながら、僕たちは唇を重ねるのでした。何度も。何度も。
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