第126話 口にすると恥ずかしいね

「すいません。取り乱し過ぎました」


 僕は、テーブルの向かい側に座る死神さんに、ペコリと頭を下げました。


「いやいや。いいんだよ。あんなに甘えてきてくれる君は新鮮だったし。思い出すだけで…………ニヒヒ」


「……忘れてください」


 おそらく、今、僕の顔は、トマトのように真っ赤になっていることでしょう。


「そ、そんなことより、どうして死神さんは、こっちに帰って来られたんですか?」


 死神さんの手紙に書かれていたことが、僕の頭をよぎります。確か、死神さんは、仕事が変わったことによって、人間世界に干渉する権利を失ったはずです。つまり、通常、ここにいることはできないはずなのですが……。


「そ、そりゃ……ね。……ニヒヒヒヒ」


 僕の質問に、死神さんは頬に手を当て、クネクネと体を揺らし始めました。その顔には、ほんの少し朱が差しています。


「……死神さん?」


 一体どうしたというのでしょう。死神さんは、まるで何かを恥ずかしがっているように見えます。こちらの世界に帰って来ることができた理由。それを告げるのは、そんなにも恥ずかしいことなのでしょうか。


「き、君も知ってるでしょ。わ、私たちが、夫婦になったから、帰って来られたんだよ。……って、や、やっぱり、口にすると恥ずかしいね。エヘへ」


 …………ん?



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