第123話 鬼の子のくせに

 お義母さんの来訪から数日後の夜。


『近寄らないで。鬼の子のくせに』


 ああ、これは夢だ。


『あのバカ息子は、私や親戚たちの言うことも無視して、あんなどこの馬の骨とも分からない娘と結婚したのよ。だから、あの娘から生まれたあんたは穢れた鬼の子なの。分かる?』


 分かんない。分かんないよ。


『やーい。鬼の子! 鬼の子!』


 僕は鬼の子なんかじゃない!


『お前は、強く生きろよ。わしは、もう……』


 おじさん、いなくなっちゃいやだよ。もっと、おじさんと一緒にいたいよ。


『気持ち悪いんだよ』


 どうして? ただ一緒に遊ぼうとしただけなのに。


『早く消えてほしいんだけど。あんたが一緒のクラスにいるとか死んでもごめん』


 なんでそんなこと言われないといけないの?


『クスクス』『クスクス』『プッ』


 みんなが僕を見て笑ってる。嫌だ。嫌だ。嫌だ。


『将棋なんかやってんの? ダッセー』


 おじさんから教えてもらった将棋をバカにしないで!


『賞状なんか貰いやがって、生意気』


 やめて! 破らないで!


『申し訳ありません。最善は尽くしたのですが……。なにぶん、事故の外傷がひどく……』


 お父さん! お母さん! 僕を置いていかないで!


 …………


 …………


 ああ…………。


 もう、どうでもいいや…………。


 死んで、楽になろう…………。


 …………


 …………


『ねえ、君、死ぬ前に私と将棋しようよ』

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