第122話 大丈夫よ

 僕が紙を書き終えると、お義母さんは、いそいそとその紙を折り、ローブのポケットへ。


「さっきも言ったけれど、許可が下りるのはいつになるか分からないわ。その時になったら知らせるわね」


「お願いします」


 僕は、ペコリと頭を下げました。少しでも早く許可が下りるようにと願いながら。


「じゃあ、そろそろ私はお暇させていただくわ」


「はい。……あ、お義母さん」


「何かしら?」


「死神さんに、『ちゃんとあなたのこと覚えてますよ』って伝えてもらってもいいですか?」


 死神さんは、手紙で言っていました。自分のことを忘れないでいてほしいと。今の僕にできるのは、死神さんの願いに応えること、そして、それを伝えることだけです。


 胸の奥から、ドロドロとしたものが逆流するような感覚に襲われます。こんなことしかできない自分。その自分に対する言いようのない怒りの感情。


「……あらあら」


 お義母さんは、困ったように笑いながら、そっと僕の肩に手を置きました。それは、とても優しくて、温かくて。僕の中のドロドロを打ち消すような何かがありました。


「大丈夫よ」


 そんな言葉を残して、お義母さんは忽然と姿を消してしまいました。


 ですが、僕の肩には、まだお義母さんの手の感触がはっきりと残っているのでした。

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