第96話 じゃあ、君の行きたいところがいい

「なんか、すごかったね。いろいろと」


「そうですね」


「……月曜日、どうなるかな?」


「どうなるんでしょう、本当に」


 だんだん月曜日が怖くなってきました。おそらく、先輩は、いつも以上に鋭い目つきで僕に迫ってくるのでしょう。「もし土曜日のことを誰かに言ったりしたら……ワカッテルワヨネ」という脅迫付きで。


 仮病使おうかな……。


「ま、まあ、気を取り直して、次行こう!」


 そう言いながら、死神さんは、握り拳を天空に向かって突き上げました。


「どこに行きますか?」


「そうだね……あ、じゃあ、さっきのペットショップにもう一回行きたいな」


「……また、周りの人をドン引きさせるようなことはやめてくださいよ」


 周りの人の「うわあ……」という視線。思い出しただけで背筋がゾクッとします。もうあんな恥ずかしさはこりごりです。


「大丈夫、大丈夫! さあ、行こう!」







 数分後。


「うにゃあああ」


 僕は、ペットショップから死神さんを引きずり出していました。即落ち二コマとはこのことでしょうか。


「うう……」


 目をウルウルさせながら、ペットショップの入り口を見つめる死神さん。


 僕の心にチクリと軽い痛みが走ります。ですが、たまには厳しくいくことも大切ですよね。


「とりあえず、次は別の場所にしましょう」


「別の場所……じゃあ、君の行きたいところがいい」


「僕の……ですか?」


「うん。私の行きたいところだけ行っても、面白くないしね」


 死神さんの目はまだウルウルしています。ですが、その顔には優しい微笑みが浮かんでいました。

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