第76話 …………詳しく教えてもらってもいいですか?

「どう思ってる……って……」


「あの子のこと、大切に思ってくれてる?」


「……当り前じゃないですか」


 自然と僕の声が大きくなるのが分かりました。死神さんのことが大切じゃないだなんて、そんなことはあり得ません。絶対に、あり得ないのです。だって、死神さんは僕を救ってくれたのですから。暗い、闇の中から。


「……そう。よかったわ」


 僕の答えに、お義母さんは、優しく微笑みながらそう言いました。


 やはり、親という存在は、自分の子どものことがいつまでも心配なのでしょう。だからこそ、子どもが嫌と言っても、ついつい子ども扱いをしてしまう。ついつい干渉してしまう。


 もし、僕の両親が生きていたら、こうやって……。


「お互いに、お互いのことを大切に思ってるのね」


 不意に、お義母さんがそんなことを告げました。


「…………え!?」


 思わず、驚きの声をあげる僕。


 死神さんは、僕のことを大切に思ってくれているのか。それは、死神さんが風邪をひいた時、僕が聞けずにいた疑問。まさか、その答えをお義母さんの口から聞くことになるとは思っていなかったのです。


「死神さん、僕のことが大切だって、お義母さんに言ってたんですか?」


「はっきりとは言ってないけどね。でも、あの子があんなに必死なところ、初めて見たんだもの」


「…………詳しく教えてもらってもいいですか?」


 お義母さんが何のことを言っているのか、僕には全く分かりません。だからこそ、僕の口からは、自然とそんな言葉が漏れていました。


 この後、お義母さんが僕に語ってくれたこと。それは、僕の知らない死神さんの話でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る