第74話 二人は……
「これ、どうぞ。安いお茶ですけど」
「これは、これは、ご丁寧に」
お義母さんは、お茶の入ったコップを受け取ると、ペコリと僕に向かってお辞儀をしました。そのまま、お茶を一気に飲み、コップを目の前のテーブルにゆっくりと置きます。
そういえば、死神さんと初めて会った時もこんな光景を見たような気がしますね。さすがは親子。
「えっと……それで、お義母さん。今日は何か御用ですか?」
「特に大した用があるわけじゃないわよ。しいて言うなら、あなたとお話しがしたかったの」
「僕と……ですか?」
「ええ」
お義母さんは、そう言って頷きます。
その時、僕の頭に、ある考えが浮かび上がってきました。お義母さんは、死神さんを連れ戻そうとしているのではないか。そんな、最悪の考えが。
思い返せば、死神さんは、僕との同棲を始める前に「親を説得した」と言っていました。裏を返せば、死神さんのご両親は、死神さんが僕と同棲することに関して、あまりいい思いを持っていないということです。昨日、お義母さんと会った時は、そんな雰囲気は感じなかったのですが、もしかしたら……。
少しずつ大きくなる心臓の鼓動。体温の下がる感覚。背筋をつたう冷たい汗。
「二人は……」
お義母さんは、優しく微笑みながら言葉を放ちました。恐怖で震えそうになる僕に向かって。
「いつ孫の顔を見せてくれるのかしら?」
「…………へ?」
死神さんといい、お義母さんといい、どうして僕の思考を止めるのが上手いのでしょうか。
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