間章 僕と死神さんの非日常②
第56話 大丈夫じゃない……
「コホ、コホ」
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない……。頭痛いし寒気はするし……」
僕の目の前にいるのは、これ以上ないというほど弱った死神さんでした。頬は赤みを帯びており、先ほどから何度も咳を繰り返しています。そう。死神さんは風邪をひいてしまったのです。死神でも風邪をひくなんて、今まで考えたこともありませんでした。
「まあ、とりあえず、今日は安静にしておいてください」
「……分かった。コホ、コホ」
死神さんは、弱々しく頷きました。ちなみに今、死神さんは、僕のベッドに横になっています。「私の布団で寝てるより、絶対に治りが早い」と言われ、仕方なくベッドを貸すことになったのです。正直なところ、全く意味が分かりません。とはいっても、死神さんには少しでも早くよくなってほしいですからね。
「……うう」
「どうかしましたか?」
「……鼻詰まりのせいで、君の匂いがよく分からない」
スンスンと掛け布団を嗅ぐ死神さん。
「…………はい!?」
まさか、そのために死神さんは僕のベッドに!? 治りが早いとは一体何だったのでしょうか……。
「……あ。そろそろ時間じゃない?」
不意に、死神さんは、壁に掛けてある時計に目をやりながらそう言いました。時刻は七時五十分。僕がいつもアパートを出て学校に行く時間です。
「えっと……わ、私のことは心配しなくていいから……ね」
「…………」
死神さんの顔には笑みが浮かんでいます。まるで、取って付けたような笑みが。
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