第46話 さあ、私が覚えた新戦法、とくと見よー!

 死神さんと先輩の対局が始まりました。


 先手は死神さん。いつも通り、7六と指します。自分のかくが移動できる範囲を広げる一手です。


 対する先輩の手は、8四歩。飛車ひしゃの前の歩を一つ前進させます。先輩は、飛車を元々の配置場所に置いたまま戦う、いわゆる『居飛車いびしゃ』を指すようです。


 死神さんは、先輩の手を見て、ニンマリと笑みを浮かべます。7五歩と先ほど進めた歩をさらに前進させました。


 8五歩と歩を進める先輩。このままでは、次に8六歩と前進され、角の頭を責められてしまいます。


 それを防ぐために、死神さんは7七角と角を移動させました。


 移動した角を狙おうと、先輩は、3四歩と突いて角の活用を図ります。この一手によって睨み合い始める二つの角。これで、どちらからも相手の角を交換できるようになりました。


「フフフ……」


 突然、死神さんの口から不敵な笑い声が漏れ出しました。それを聞いた先輩は、訝しげな表情で死神さんに視線を移します。


「急にどうしたのよ?」


「さあ、私が覚えた新戦法、とくと見よー!」


 死神さんは、綺麗な手つきで駒を持ち、パチンと力強く盤上に打ち下ろしました。


 死神さんの指した手は、7八。戦法の名は、『新鬼殺しんおにごろし』。昨日、僕が、スマホで調べながら、ほんの少しだけ教えた戦法です。そう、ほんの少しだけ……。

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