第40話 ……ナニシテルノ?

「へえ、ここに住んでるのね」


 玄関扉をまじまじと見ながら、先輩はそう口にしました。


「先輩。本当に、しに……姉と会うつもりですか?」


「当り前じゃない。あんたのお姉さんと交渉して、あんたが将棋部に入部する許可をもらうんだから」


 死神さんと会う気満々の先輩。最初は何とかして断ろうとしたのですが、強引に押し切られてしまいました。


 僕、弱いなあ……。


「ちなみに、僕の選択権なんかは……」


「あるわよ。将棋部に入部するか、私をあんたのお姉さんに会わせてくれるか、どっちかを選ぶ権利がね」


「それは権利がないのと一緒なのでは?」


「あー、もう。いいから、早く鍵開けなさい。扉の前で話してたって仕方ないでしょ」


 そう言いながら、先輩は、玄関扉をビシビシと指差します。この強気の姿勢は一体どこから来るのでしょうか。不思議で仕方がありません。


 しかし困りました。先輩と死神さんが会ったとして、いい結果になる未来が全く見えません。最悪の場合、死神さんが自分の正体をばらしてしまい、僕が学校に居づらくなる可能性すらあります。もしかしたら、気味悪がられて、また小学校や中学校の時みたいに……。


 やっぱりちゃんと断ろう。僕がそう決めた時でした。


「……ナニシテルノ?」


 僕たちの後ろから聞こえた不気味な声。思わず、後ろを振り向きます。


 真っ黒なローブ。真っ黒な三角帽子。綺麗な赤い瞳。胸のあたりまである長い白銀色の髪。そこにいたのは、仕事帰りであろう死神さん。その表情は、今まで見たことがないほど怖いものでした。

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