第37話 ……別に、羨ましくなんかありません

 キーンコーンカーンコーン。


 四時間目終了のチャイムが鳴りました。授業後の挨拶が終わると同時に、教室内がザワザワとざわめき始めます。


 僕は、鞄の中から弁当箱を取り出し、机の上に置きました。パカッと弁当箱の蓋を開けると、中には今日の朝食と同じおかず。さすがに、朝、弁当用に新しくおかずを作る時間はありません。ですが、一つだけ違うものがあります。それは、小学生の頃から好きな冷凍食品の唐揚げ。今日はこれが楽しみで……。


「学食行こうぜー」


「おー」


 おしゃべりをしながら教室を出ていくクラスメイトたち。きっと、彼らは一緒に食事をするのでしょう。教室内を見渡すと、机をくっつけて友達数人と仲良く食事をする人たちの姿が目に映りました。


 ……別に、羨ましくなんかありません。そう、羨ましくなんかないのです。一人飯には一人飯のよさがあるのです。例えば……例えば……おかずを奪われないとか。


 …………食べよう。


「いただきます」


 そう言って、僕が手を合わせた時でした。


「ここ、いい?」


 聞いたことのある声がしました。顔を上げると、一人の女生徒が僕の机を指さしています。リボンの色は黄色。背は僕より少し低いくらい。黒髪短髪。鋭い目つき。いかにも強気といった様子。


「……先輩?」


 その人は、昨日、本屋で出会った先輩でした。

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