第4話 ……ワカッテタヨ

「綺麗ですね」


 無意識のうちに僕の口から飛び出した言葉。それを聞いた死神さんは、「え!?」と驚きの声をあげました。


「そ、そんな。急に口説くなんて……。ま、まあ、確かに私は年下好きだけど、いきなりは……。ま、まずは、友達から……」


「あの、何を勘違いしてるのか知りませんけど、僕が綺麗って言ったのは、その光の粒の方です」


「…………」


「…………」


「……ワカッテタヨ」


 どうして片言なのでしょうか。その理由は明白でした。


「……分かってなかったんですね」


「ちょ、ちょっと静かにしてて! 集中できないから」


 そう告げる彼女の顔は、少し赤くなっていました。


 光の粒はさらに集まり、一つの形を成していきます。そう。それは、アニメや漫画で見るのと全く同じ、死神特有の持ち物。


「鎌……ですか?」


 僕が呟くと同時に、光が徐々に弱くなっていき、大きな鎌が姿を現しました。


「ふっふっふ。どう? すごいでしょ?」


 得意げな顔の死神さん。突き上げた手に持つ鎌がギラリと光ります。


「……さすがに、これは、あなたが本物の死神だって信じるしかないですね」


「そ、そうでしょう、そうでしょう。し、死神といえば、や、やっぱり、か、鎌だよね」


「……重くないんですか? それ」


「な、ななな何を言ってるのかな君は!? 死神が、そんなこと言うわけ……あ、やっぱり無理」


 死神さんは、鎌を勢いよく床に落としてしまいました。床にザクリと刺さる鎌。


「……大家さんになんて言い訳しましょう」


「あ、あああ。ご、ごめんね」


 ペコペコと頭を下げる死神さん。


 ……まあ、今から自殺する予定の僕にとって、床に付いた傷なんて大した意味はないのですが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る