第13話 8月30日 2 ……(真央)
「わ〜! 久しぶりだな〜学校来るの〜」
「今は、新校舎になってこっちは旧校舎として残ってはいるけど、誰も使ってないんだって」
「うはぁ! あたしら、もうそんな歳とったの? うけるー、もうおばさんじゃーん!!」
「……まぁ、私たちの時からちょっとガタきてたわよねこの校舎……」
4人で談笑しつつ、私たちはあの部室に向かう道を歩いていた。
この学校でもし、奈々に関する手がかりが残っているとするならそこくらいしか思い当たらなかった。
「あ〜! 懐かしい!! 見て見て!! これ、佐奈が書いたやつ〜」
「ほんとだー! まだ残ってたんだーうけるー」
「いやいや、面白くはないから……」
「ここ……私たちが卒業してからは、使われなかったんだね……」
「まぁあ、日当たりも悪いし、クーラーもボロいし、快適! って感じではなかったしねー」
「でも、佐奈は好きだったな。みんなで、ここでお菓子食べたり、お喋りするの」
「それは、あたしもー」
「うん、私も楽しかった。静葉は?」
「……悪くは、なかった……わね」
それぞれが顔を見合わせ、笑い合う。
あの頃は、ここにもう1人、奈々もいて……。
「……ここにも、いないね……奈々ちゃん。」
「いるとするなら、ここだ! っと、思ったんだけどなー」
「……奈々、あの日までは、ここに毎日いたわね……」
「なのに、来るのは毎回、一番遅くって……もしかして、私たちが集まるのを待ってたのかな?」
私の発言に、みんなが口を閉ざす。
「じゃんぷあーっぷ! 今がすべてー」
佐奈が突然懐かしの歌を口ずさむ。
「佐奈?」
「……この歌、好きだったよね? 奈々ちゃん」
それは、バンド活動としてオリジナルソングなんか作れるはずのない私たちがコピーした曲。
一生懸命、練習して頑張った私たちの青春の曲。
「みんながいれば、きっと、きっと」
続いて美咲が口ずさむ。
「……明日も、幸せだ……。」
それは、私たち自身のことを歌っていたのかもしれない。
歌唱力なら、奈々の方があるはずなのに……。
奈々は私の声で、歌って欲しいと何度も頼んできた。
私の声には、力がある……奈々はそう言ってた。
私の声は、みんなを笑顔にできる。
それが、奈々が、私に言ってくれた、最初の褒め言葉だった。
「……奈々は……いつも真央が歌っているのずっと横で聞いてたわね……」
「そうそう! なーんか幸せそうな顔して座ってさ」
「奈々ちゃん、嬉しそうだった!」
……奈々は、どうして、私なんかの歌を……
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「あたし! 真央の歌!! だーいすきー!!!」
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そんな奈々の幻聴が消こえた気がして、私は思わず窓の外に視線を向けた。
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