第4話 8月22日……(真央)
「んっ……」
携帯のアラームの音で、今日も目覚めーーいや、この音はアラームではない。
でん、わ? しかも知らない番号から?
間違い電話かもしれないと思いつつ、電話の応答ボタンを押す。
「はい、もしもーー」
「……久しぶりね。真央……」
「!? 静葉!!!!」
それは、予想外の人からの電話だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えーっと……あの……?」
「んっ? どしたの? 真央っち?」
「いや……確か、今日、集まったのって……。」
「反省会? だよねー。あー。そのクッキー佐奈にもちょうだーい〜。奈々ちゃーん。」
「あーん」
「あーん……」
「……いつものお菓子パーティーね……」
「だよ、ねー……」
8月21日、私たち5人のバンドは、初めてお客さんを入れてのLIVEを開催した。
結果は上々。
……というより、奈々のお姉さんのライブハウスの常連さんしかおらず、出演がほとんどおじさんバンドばかりの中に私たち、高校生のガールズバンドが混ざれば……それはもう……。
異常だと言わんばかりの盛り上がりだった。
そして、今日は、次のライブと今回のライブを通して今後、どうしていくか話し合うため、夏休みの学校にわざわざ集まっていた。
学校を選んだ理由は、いくつかあるが、大きな声を出し、お菓子も食べれて、涼しい場所でお金がかからないという最高の条件がこの部室には揃っている。
「……んで、奈々。次のライブ、どうするの?」
「次は、これ」
奈々がカバンから取り出したのは、アマチュアのダンス大会のチラシだった。
「……ダンス大会?」
「大会に出ちゃうの!?」
「……」
「練習はした。後は、その首を取るだけ」
「首って、戦国武将じゃないんだから」
「それに……この大会は、実力のあるダンスチームも出るのよね? 大丈夫なの? 奈々?」
「そっ、そうだよ! やっぱやめておいたーー」
「大丈夫」
「奈々?」
「首、取れるよ。あたしたち」
奈々が自信満々に言い放つ。
奈々の思いつきで始めたバンドとダンス練習を私たちは既に、2ヶ月近くやってきた。
この2ヶ月、とにかく大変だった……。
……でも……すごく楽しかった。
「確かに、佐奈も最初は踊ってるのか転がってるのかわからなかったけど、今はちゃんと踊れているもんね〜。」
「も〜酷いよぉ。静葉ちゃん、転がってるって!!」
「でも、今はすごく上手に踊れてる。転がってない」
「も〜奈々ちゃんまで、転がってるって言わないで!!」
今、一番下手くそなのは私かも知れないくらい佐奈は努力した。
私はーー。
「大丈夫」
「?」
「真央も上手」
心を見透かしたように、奈々が私に笑いかける。
「美咲」
「……奈々、あたしーー」
「大丈夫。5人なら、大丈夫。楽しいよ。美咲」
「……!! うんっ!!!」
その夏、私たち5人は数ある強豪の中、30チーム中、3位というとんでもない成績を残した。
奈々は、首取れなかったと少し残念そうだったけど、でも始めたばかりのあたしたちには充分すぎる結果だった。
美咲が佐奈より、泣いて喜んでいたのは意外ではあったけど。
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