第2話 8月18日……(美咲)

「おっはーーえっ? 何これ……」


 部室に入った途端、真央っちの目が点になる。


 あたしは、それが面白くて笑っちゃったけど、佐奈は不思議そうな顔してた。


「佐奈……また大量にお菓子買い込んだの?」

「ちちち違うよ!! みみみみんなで食べようと思って!!」

「そうそう、あっ、真央っちも座んなよ。今、飲み物入れるからさ! ジュース何がいい?」

「……オレンジ」

「オッケ〜」


 ルンルン気分で、あたしはみんなの分のジュースを入れていく。


「今日、静葉と奈々が生徒会でいないから?」

「んぎゅ!?」

「わっ、かりやすいよね〜佐奈はさ。静葉に怒られない日にお菓子パーティーする、なんてさ」

「ちちち違うよ!! たたたたまたまだよ!!」

「動揺しすぎ」

「ほんっと! 佐奈は可愛いなー。このこのー」


 あたしが佐奈の頭をわしゃわしゃと撫でると、佐奈はなんだか嬉しそうににへへって笑ってた。


 真央っちは、そんなあたしらを見ながらポテチをつまんでた。


「真央っち〜、真央っちも混ざって良いんだぞ〜」

「遠慮しとく」


 そう言いつつも、真央っちはなんだか嬉しそうに笑ってた。


「おーい、皆のものー戻ったぞー」

「あっ……」

「静葉……ちゃん……」

「奈々、早かったね」

「そっこー終わらせてきた!」

「……佐奈?」

「はひゅ!?」

「これ、説明してくれる?」


 そう言った、静葉がすげー怖かったのは今も覚えてる。


「美咲、良い?」


 叱られている佐奈、怒っている静葉、なだめてる真央っちを遠目で見ていた、あたしに同じく遠目で見ていた奈々っちが声をかけてくる。


「なに〜? 奈々っち」

「ダンスチーム、作ろうと思う」

「ダンスチーム? 良いじゃん!! 良いじゃん!! あっ、でもバンドは?」

「バンドもやる、ダンスもやる」

「欲張りだね〜奈々っち〜」

「美咲、ダンス、教えて」

「えっ? えー? あっ、あたし?」

「私、踊れない」

「えっ? そうなの? じゃあなんで? ……奈々っちもしかしてあたしのーー」

「きっと、楽しいから」

「たの、しい?」

「うん、美咲と佐奈と静葉と真央で踊るの、きっと楽しいから」


 楽しい、それはあたしがダンスでなくしてしまった感情。


「あたしも……たのしい、かな?」

「楽しいよ。この5人でやれば、なんだって楽しい」


 奈々っちのその言葉は、何の根拠もないはずなのに、すごくすごく確かなもののような気がした。


「そう、だよね! この5人なら楽しいよね!!」

「絶対、楽しい」


 そう言って、あたしに笑顔を向けた奈々っちがとても眩しく見えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おっ、真央っち〜こっちこっち」


 真央っちの姿を見つけ、学生時代のように大きく手を振る。


「久々〜真央っち、元気だったー?」

「元気……ではないかな。美咲は? イン◯タバズって大変みたいじゃん」

「あっ、見てくれた? 佐奈も向こうからリプくれてさ〜もう、めちゃくちゃテンション上がったぁ!!」

「そうなんだ。今、飲んでるの? タピオカ?」

「そっ! 期間限定!! キムチタピオカ!!」

「……美味しいの?」

「飲んでみる?」

「遠慮しとく」

「だよね〜」


 久々に会った真央っちの顔色が少し悪く見えて、心配だったけど。


 話してみれば、あたしの知ってる、いつもの真央っちで少し、安心した。


「相変わらずだね。美咲」

「そりゃそうよ! あたしはいつだって元気、元気、あっ、キムチタピオカは失敗しちゃったけどね! 真央っちは? 何、飲んでるの?」

「……黒みつきなこタピオカ」

「佐奈が好きそうなやつだね!」

「だね。佐奈とは、今も連絡取ってるの? さっきもリプ? くれたとか言ってたよね?」

「うん! こっち戻ってきた時は良く遊びに行くよ〜」

「……静葉は?」

「……」

「ごめん……」

「……」


 永遠だと思えるような静かな時間がそこに流れていた。

 

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