第14話 お客さんかい?
ポーリン「あなたが森の隠者さんですか? 森の奥に隠れ住む謎の魔法使い?」
ルーク「違げぇよっ」
フィル爺「ふぉっ? 面白いお嬢さんじゃな。確かに森で暮らしておるが、儂は魔法は得意ではないから、魔法使いではないかのぉ」
ポーリンを森の奥の家に連れ帰ったルーク。フィルに事情を説明すると、快く受け入れてくれた。
人間を見捨てて森の奥に隠れ住んでいるとは言え、基本的にフィルは優しい人間なのである。
リスティ「やぁ、おかえりルーク。お客さんかい?」
奥で食事の支度をしていたリスティが出てきた。その美しさにポーリンは目を奪われている。
ルーク「ただいま、お酒買ってきたよ。この子はポーリン、森の中で毒蛇に噛まれて倒れていたんだ」
ポーリン「う、美しい……、は! すいませんアタシったら! 初めまして、私はポーリンと言います。冒険者をしています」
リスティ「そうか、災難だったね。私はリスティ、よろしくね。お腹減ったろう、食事にしようか」
リスティはフィルに手を貸し、ダイニングテーブルへと移動するのを手伝う。ベッドの上で寝たきりにならないよう、なるべく動くようにしているのはフィルの希望でもある。
ポーリン「ちょっと、ルーク!」
小声でポーリンがルークに囁く。
ポーリン「あの人って……耳が尖ってるけど、まさか」
ルーク「ああ、リスティはエルフだよ」
ポーリン「エルフ……初めて見た……」
ルーク「言っとくけどリスティは女性じゃないよ?」
ポーリン「そんな事、見れば分かるわよ」
ルーク「え、そうなの……?」
森の家での食事は、ルークお手製の干し肉や干物、森で採れた果物や野草、弓の達人のリスティが仕留めてきた新鮮な森の動物の刺し身なども並ぶ。
ポーリン「美味しい~」
リスティ「C茸の干物のダシがきいているからね」
フィル「若いんだからたくさんお食べ。儂はルークの干し肉を肴に酒があれば良い。うむ、なかなか良い酒じゃの」
ルーク「爺ちゃん、あまり飲みすぎないでよ、身体によくないよ」
フィル「分かっておる。だが、酒は百薬の長とも言うのじゃぞ、少量飲む分にはむしろ健康には良い効果がある。しかし、珍しい酒を見つけて来たな、懐かしい」
ルーク「コメという植物を発酵させて作った酒らしいよ、遠い国から取り寄せてるって言ってたけど、さすが爺ちゃん、何でも知ってるね」
フィル「おお、昔、それを作っている国にも行ったことがあるからな。そのコメを茹でて、握ってかたまりにしたオニギリという料理が美味かったぞ。お主にやったオニギリ丸の名前の由来でもある」
ルーク「え、鬼を斬る剣じゃなかったの???」
フィル「違うぞ、おにぎりと引き換えにドワーフに作らせたので、おにぎり丸じゃ」
ルーク「知らんかった……」
フィル「ふぉっふぉっふぉっ、まだまだ読みが甘いの、ルークよ」
ルーク「分かるかーい」
ポーリン「な、なんだか愉快なお爺さまね……」
* * * * *
ルーク「じゃぁ、ポーリンはここで寝るといいよ」
食事が終わり、ルークはポーリンを自分の部屋のベッドに案内した。
森の家には客間などないので仕方がない。(※もちろん一緒には寝ません)
ポーリン「うわ、なにこれ! ふわふわ~」
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