第13話 ウチ来る?

ルーク「いや、川で汲んだただの水だけど?」


少女「ただの川の水がこんなに美味しいわけない!」


ルーク「いや、本当なんだけどね……」


実はルークがクリーンを掛けた水は、誰もが驚く美水となるのだ。


ルーク「そんな事より、どうしてこんなところで倒れていたのさ?」


少女「は! そうだった……私は、私達は、毒を持った魔物に襲われたんだった。ポイズンドートにポイズンリザード、挙げ句のはてにフォレストサーペントまで出てきて……」


ルーク「もしかして西の毒の沼に行ったの? あそこはまともな人間なら近づかない場所だよ?」


少女「依頼クエストだったんだから仕方ないでしょ……私は反対したんだけど、パーティリーダーがどうしてもやるっていうから仕方なく……だけどアイツラ! 私を置き去りにして逃げやがったのよ」


ルーク「それはご愁傷さま。人間は裏切るからね。でも、それでよく助かったね?」


少女「必死で逃げたら、モンスターはなんとか振り切れて、助かったのよ。でも、油断したところで毒蛇に噛まれてしまって。魔物じゃじなくて普通の毒蛇ね。ポーション飲みながらなんとか街を目指してたんだけど、とうとう力尽きて」


ルーク「ああ、ポーションでは毒状態は治らないからね」


少女「あなたが助けてくれたの?」


ルーク「うん、もう大丈夫だよ、毒はもう消えてるはず」


少女「あなたが【キュア】(毒消しの魔法)を掛けてくれたのね? 私はポーリン、あなたは?」


ルーク「僕はルーク。掛けたのは【キュア】じゃなくて【クリーン】なんだけどね」


ポーリン「嘘、【クリーン】なんかで毒状態が治るわけないじゃない……あらでも、身体が綺麗になってるわね」


ルーク「ああ、普通はそうらしいね。僕の【クリーン】は普通じゃないって言われた」


ポーリン「信じられない話だけど、助かったのは事実だから、お礼を言うわ。どうもありがとう」


礼を言い、立ち上がろうとしたポーリンだったが、足に力が入らずよろけてしまう。


ルーク「大丈夫かい? そんな状態で街まで戻れるかい?」


ポーリン「お……」


ルーク「お?」


ポーリン「送ってくれない? 街まで…」


ポーリンは可愛らしく上目遣いで言ってきた。


ポーリン「どうせ助けたんだったら最後まで面倒みようよ? どうせあなたも街に帰るんでしょ? 戻ったらちゃんとお礼もするから」


ルーク「えええ~今、僕は街から帰ってきたところなんだけど? 爺ちゃんが待ってるから早く家に帰らなくちゃ」


ポーリン「ちょと何言ってるの? あなた、ルークは一体どこに帰るの?」


ルーク「森の奥だけど? 街とは反対方向…」


ポーリン「……もしかして! 森の隠者?! 森の中に隠れ住む魔法使いが居るって噂があったけど、ルークが…違うか、そのお爺ちゃんがそうなのね?」


ルーク「そんな噂があるの? 知らんけど、そんな状態じゃ街まで辿り着けそうにはなさそうだね…


…しょうがない、一緒に来る? 一晩泊まっていけばいい、明日になったら街まで送ってあげるよ」


ポ―リン「一晩泊めて、何かする気じゃないでしょうね?」


自分の身体を両手で抱いてポーリンがジト目で言った。


ルーク「言ったろ、僕一人じゃない、爺ちゃんも一緒だよ」


ポーリン「森の奥に隠れ住み、長いこと人と会ってなかった老人は、久々に見た若い女の肌に目がくらみ、夜中、寝室に忍び込み……って話が最近街で人気の吟遊詩人が夜の酒場でしてる小話なのよ」


ルーク「ちょっと何言ってるのか分からないけど」


ポーリン「まぁその…お爺さんじゃなくてアナタだったら……」


ルーク「?」


ポーリン「い、命を助けられたんだし、お礼にって言われたら仕方ない、断れないワヨネ……」(ポ)


ルーク「何してるの、さぁ行くよ?」


ポーリン「あ、ちょっと待ってよぉ…」


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