連れてきてしまった。

私の祖父の家にはナニカがいます。それも1人じゃなくて複数。


祖父の家は築100年を超える家です。戦前に建てた家で今でもそっくりそのまま残っています。


そして家には、夜中になると動き出すやつ、夕方になると動くやつ、ある部屋にだけいるやつ、そんな奴らがいます。


もう慣れたんですが、お伝えしておきます。


1人は夕方から動き始めるんです。玄関付近の床をギシギシ鳴らしてゆっくりとリビングに向かってきます。リビングに着いたと思ったらまた玄関に戻っての繰り返しです。


もう1人は夜中になると動き出します。私は2階の2部屋のうち奥の部屋を使っています。夜中になると階段を登る音が聞こえ出します。そして階段登りきると廊下をヒタヒタと音を立てながら歩き私の部屋の前で止まります。扉を開けることはしないものの何度も何度も扉の前に来てはまた階段をのぼり始める。これを繰り返します。降りる音は聞こえないんですよね。


ある部屋にだけいるやつは、2階の使ってない部屋にいます。その部屋からは、ときどきバタンバタンと扉を乱暴に開閉する音が聞こえるんです。でも、その部屋の出入口、押し入れの扉などは全部横にスライドさせるタイプの扉なんですよね。無いはずの扉の音が聞こえてくるんです。


祖父は私が小さい頃から、

「この家には座敷わらしがいっぱいいるからな。夜は見守ってくれてるんだぞ。」

って言ってたんです。


でも、私が音がすると伝えても、音はしないって、多分聞こえないんでしょう。


私は霊感が強い方なので、聞こえるんでしょう。


話は変わるんですけど、っていうか本題にはいるんですけど、私は祖父の家に泊まっている間に、ウォーキングをするんです。隣町まで5キロぐらいあるんですけどそこまで歩くんですよ。


そしたら、そこの町の小学校が廃校になってることに気づいたんですよ。廃校は、町の外れにあって私はいつもそこまで行くことなく引き返してたんです。でも、この前気になって見に行ったんです。


まだ使われてるのかなと覗き込んだら、ガラスは、1枚も割れたりしておらず綺麗なままなんですが、グラウンドは腰の高さほどある草がびっしりと覆い隠し、夏なのにプールの水濁ったまま、そして校舎の中には誰が見てもわかるぐらいに瓦礫が沢山積み上がっていました。


私は怖いものは嫌いなんですが、怖いものをわざわざ体験しに行くのは好きなんです。昼間にいっぱい写真を撮ったり動画を撮ったりと、初めての廃校を楽しんでいました。そして帰り際に思ったんです。


夜中にもう1回きて、写真撮ろうかな


って。私はその日のうちにまた家を出て隣町に向かっていきました。


海沿いの道を5キロも歩いて隣町に向かいます。途中に街灯なんてありません。スマホの光を頼りにコケないように気をつけながら歩きます。


廃校についてカメラを回し始めました。廃校はすぐ横が海になっていて街灯がたっておらず暗くとても不気味な雰囲気を漂わせていました。それでも来てしまったからにはカメラを回してあわよくば心霊写真を撮ってやろう。そう意気込んで約20分かけてぐるっと回りました。


カメラを回してる間は特になんてことは無かったんです。ただ途中に不思議なことがあったんです。どうやってもカメラには映らなかったんですが、二階建ての校舎の二階の端と、1階の真ん中の電気がついてるように見えたのです。


角度を変えて見ると電気は消えていて、これは遠くの街灯の光のせいでそう見えただけだ。そう思いました。でも、帰る途中に気づいたことがあって、1階に光は届くはずがないんです。1階の高さより高い草と、そして民家で光が遮られるはずなんです。


怖くなって、足のスピードを上げて帰りました。


勿論後ろなんて振り返りませんよ。だってずっと振り返ったらナニカが見えそうで怖かったから。


家には無事に帰りつきました。特に何も無かったので安心して部屋のベッドに倒れ込みました。


そして眠いまま撮った画像を確認します。真っ暗でちゃんとした写真が撮れておらず、イライラしながら1枚1枚加工で明るくしていきます。


その時は気づかなかったんです。プールの画像に写りこんでいた人の顔に。


友達に写真を送り付けると、

『ナニカ写ってる。これ昼間の画像ないの?』

そう言われて昼間の画像を送り、私も見比べながら確認します。


居たんです。飛び込み台のすぐ下の水から頭だけを出してこちらを見ている白い顔が。急いで動画を確認します。プールにカメラを向けた時からそいつはこちらをずっと見ていました。


その日の夜、恐ろしくなった私はなかなか寝つけませんでした。外は土砂降りの雨です。ときどき雷もなっていて、とても不気味でした。


そんな時に、部屋の奥から

ピチョン…ピチョン…

って聞こえてくるんです。やばい!雨漏りって思って電気をつけました。部屋の奥を見に行って雨漏りの場所を確認するんですが、どこにも水滴が垂れた様子がないんです。外の音と聞き間違えたか、そう思ってまた電気を消してベッドに入ります。


でもやっぱり聞こえるんです。

ピチョン…ピチョン…

って。私はその時にふとあの動画を見たんです。夜中に廃校を映した動画を。イヤホンをつけて霊が写りこんでいたシーンを流します。


ピチョン…

そう。水の音が1度だけなっていたんです。


あぁ、私は連れてきてしまったんです。


この家には複数のナニカがいます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オチのない怖い話 病んでる高二 @AoiLiz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ