221:ソフィアの姑問題~後編~

 「・・・とまぁ、こういったことがあったのよ。つまり今話した同じ状況を意図的に作ってみてはと思ってるの。」 

 

 「上手くいくかな・・・」


 ソフィアは不安そうだった。


 「絶対とはいえないわね。でもさっきも言ったけど、変えたいなら動くしかないと思う。何もしないならそのままよ。そして決めるのはソフィアよ。」


 セレスティアはソフィアを見据えた。


 「・・・わかったわ。やってみる。」


 ソフィアは、どうせ言われっぱなしなら、一矢報いたいと思ったのだ。それから、二人はその話に乗っ取った作戦を練った。









 数日後、結果を言うと、セレスティアの策が講じ、ソフィアは姑から嫁いびりをされることはなくなった。 全ての姑問題に効果があるというものではないが、今回の場合には功を奏したのだ。そして報告を兼ねて、ソフィアは竜騎士支部にセレスティアに会いに来たのだ。





竜騎士支部の面会室にて___

 


 「ありがとう。あれから義母のいびりがなくなったわ。」


 セレスティアは思わず目をぱちくりし、ソフィアの言葉に耳を疑った。


 「な、なによ?その顔は?」   

 

 「だって、ソフィアからありがとうって初めて聞いたかも・・・・」


 それを言われソフィアは真っ赤になった。


 「ちょっと!まるで私が酷い奴みたいじゃない!!」


 ソフィアの言葉に、セレスティアの目は生暖かいものを見るような目になっていた。


 「・・・自覚ないの?」


 「うぅっ!」


 身に覚えのあるソフィアはそれ以上言葉を紡げなかった。


 「ま、何にせよ上手くいって良かったわね。」


 セレスティアも気になっていただけに、解決したならばとホッとしていた。


 「うん・・・」


 此度の件は、セレスティアの話に出てきた医師に協力を仰いでもらうことができたのだ。第三者から強い言葉を放つには、それができる人でないと話にならないからだ。ましてやその言葉を放つ相手は侯爵夫人だっただけに物怖じしない人が必要だった。そして一芝居うつことになったのだ。医師にしてみれば、前回は感じたままを言っただけのことであったが、そういうことならばと、快く協力してもらえる運びとなったのだ。


 「で、あのお医者様は結局そのままかかりつけ医になってもらったの?」


 「うん、実際腕も確かな人だったから、そのままお願いすることにしたわ。」


 その医師は、元々腕も良かったことから、ソフィアの侯爵家のお抱え医師の一人となったのだ。


 「そう、良かったわ。」


 セレスティアも確実な作戦とまではいかなかったので、不安ではあったが、成功したと聞いて安心していたが、当のソフィアは浮かぬ顔だった。


 「どうしたの?あんまり嬉しそうな顔じゃないわね?」


 ソフィアは少し俯いたまま、

 

 「・・・私ね、考えたのよ。」


 「?」


 「なんで、貴方に・・・セレスティア姉さまに意地悪してたんだろうって。」


 「あぁ・・・」


 なるほど、恐らく今回の件で自分の今までの行動を顧みているのだなとセレスティアは思った。


 「小さい頃から思い返してみたけどね、よくよく考えたら特になかったのよね。セレスティア姉さまに嫌なことをされたことなんかなかったなって。」


 「そうね、私も何かした記憶はなかったけど、もしかしたらそういうのって知らずにやってることもあるから、そういう類なのかと思ってたわ。」


 セレスティアが少し困った顔で言うと、ソフィアは首を横に振った。

 

 「ううん、ないわね。私は結構やってしまったけど・・・。」


 「あっははは、そうね。洗濯物とか台無しにされたこともあったわ。」


 「あ、あれは・・・!あ、あの時は悪かったわよ!」


 ソフィアは顔を真っ赤にし、かなりバツの悪い顔になっていた。


 「お母さまのせいにするわけじゃないけど、お母さまがセレスティア姉さまを嫌っていたから、私も敵認定しちゃったのね。冷静に考えたら、本当になんてことしたんだろうって・・・」


 「・・・・・」


 「なのに、私が困っていたら、助けてくれて・・・本当私は今まで何やってたんだろって・・・」


 ソフィアは後悔の念にさいなまされていたのだ。自分はなんてことをしてしまったのだと。


 「そりゃそうよね。カイエル様だって、こんな女に見向きもしないのは当然だわ。」


 「ソフィア・・・」


 ソフィアは姿勢をただし、セレスティアを真っ直ぐに見つめた。そして深々と頭を下げたのだ。


 「改めて、今まで本当にごめんなさい!」


 「え?!」


 セレスティアはまたもや驚いた。


 「ど、どうしちゃったのソフィア?」


 まさか頭を下げるとは思ってもみなかったので、セレスティアは動揺を隠しきれなかった。


 「私、今回のこともだけど、主人に話したの。今までのとこも全部。セレスティアはお姉さまに何をしたのかも。」


 まさか、そこまで話をしているとは思わずセレスティアは驚きで固まったままだった。

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