204:その声は
「セレスティア!大丈夫か?!」
カイエルは、セレスティアの傍に駆け寄り、まずは安否を確認するため抱きしめ、体中を弄っていた。
「カ、カイエル、あのちょっと恥ずかしいから・・・」
カイエルが自分を心配してくれた気持ちは嬉しかったが、さすがに公の場で抱きしめられたり体を触られるのは抵抗があった。
「す、すまん!で、本当にどこも怪我とかしてないのか?」
「えぇ、魔法は剣で打ち返しちゃったしね。体のどこにも触れていないから大丈夫よ。」
セレスティアはカイエルを安心させるように、ニッコリと微笑んでいた。
「で、でも無茶するなよ!まさか俺もあいつはまた結界壊すと思ってなかったから油断しちまったけど・・・咄嗟に助けられなくてごめん。」
イリスは結局セレスティアに打ち返された自身の魔力の玉の痛みに蹲っているところを、ダンフィールとラーファイルに取り押さえられていた。
「ご、ごめんね。あまりに言い様に腹が立っちゃって・・・だけど、同時になんか可哀想な人に見えちゃったのよね。」
「可哀想?」
カイエルはセレスティアの言う可哀想という意味が理解できなかった。
「それにしても、あいつ、あんな余力が残ってるとは思えなかったくらいの結構な魔力だったけど、よく簡単に打ち返せたな。その点は俺も驚いたよ。」
カイエルは疑問に思っていた。確かに『竜の祖』である自分と交配したことによって、番の身体能力が向上するとはいえ、ここまで急激に上がるものかと。今までセレスティアとずっと一緒にいたが、彼女の身体能力はかなり高い方だとは思っていたが、魔力はそんなに高い方ではないことをカイエルは知っていたからだ。一見、ただ魔力を跳ね返しただけに見えるかもしれないが、跳ね返すには受ける側もそれなりに魔力が高くないとできない所業なのである。イリスは魔力がずば抜けている魔人とハイエルフのハーフだ。故にかなり高い魔力を持っている。魔力が高い自分なら何も不思議ではなかったが、セレスティアだからこそカイエルは疑問だったのだ。
「んーとね、実は声が聞こえたのよ。」
「声?」
カイエルは一体何のことかと思ったが、当のセレスティアも、詳しくはわかっていないようで、
「うん。『大丈夫だよ。』って、頭の中でそう聞こえたの。だから大丈夫なんだろうなーって思ったら、本当にできちゃったよ。」
その声は、セレスティアにとって初めて聞いた声であったが、なぜか疑うことなく信じることができたのだという。
「ちょ、なんだよ、そんな安直に聞くからに怪しい・・「セレスティア!」」
しかし突如割って入る声があった。
「セレスティア、貴方!」
声の主はイシュタルで、振り向いてみると、彼女は喜色満面な様子で駆け寄ってきた。なぜイシュタルがそんな嬉しそうな顔をしているのか、セレスティアは戸惑っていた。
「イ、イシュタルさん、どうしたの?」
するとイシュタルはセレスティアに抱き着いた。
「凄いわ!!あぁ!!本当に、ほんっとうーに凄いことなのよ!!」
セレスティアには言葉の意味がわからなかったが、イシュタルは何やら力説して興奮している。
「お、おい!姉貴なに俺の番に抱きしめてんだ!!」
カイエルは自分の時は注意されたのに、姉のイシュタルがセレスティアに抱き着いていることに怒っていた。
「煩いわね!こんなにめでたいことはないのよ?」
(めでたい?)ますますセレスティアは意味がわからず、頭の上には疑問符がいっぱいだった。
「姉貴、何がめでたいいって言うんだよ?!」
イシュタルはセレスティアとカイエルの顔を見ながら、予想だにしなかった言葉を口にした。
「だって、セレスティアは妊娠しているのよ。気が付かなかった?」
「「え?」」
カイエルとセレスティアはお互いの顔を見て、声を被らせて驚いていた。
「「えーーーーっ?!!」」
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