203:イリスの足掻き
「なっなっ・・・!」
イリスは口をパクパクさせていた。何かは言われるだろうとは思ってはいたが、こんなにバカにされた言い方をされるとは思ってもみなかったからである。
「それにね。」
セレスティアはずいっとイリスの前に出た。
「貴方、自分がそういう目にあったくせに、結局他の人に同じように、いえそれ以上に酷いことしてるじゃない。どの口が言ってるのよ。」
セレスティアは、騎士学校時代に言われていた氷の人形のように無表情で冷たい眼差しをイリスに向けていた。
「フン、そんなこともわからないのか?魔王になるという大望を成し得るには、小事の犠牲は付きものなんだよ。それに俺の境遇と一緒にされるなど不愉快だ!俺は・・・本来なら生まれるはずのない魔人とハイエルフの血を引いているんだよ!つまりは選ばれた者!俺はお前らとは違うんだ!!」
「「「「!!!!」」」」」
イリスの言葉に、その場にいる全員は憤った。そしてイリスがなぜこんな野望を抱いたのか全容が見えたのだ。
「イリス様・・・」
ディアナもイリスの仲間とはいえ、不安気な眼差しをイリスに送っていた。そして、ディアナの心はかなり揺らいでいた。
「・・・貴方は、自身の生まれが特別だったと思うことと、迫害された境遇が、歪んだ思想を生んでしまったのね。」
セレスティアは憐れむような目でイリスを見つめていた。
「なんだ、その目は?」
イリスはセレスティアの視線が不快だった。だがセレスティアはそれでもジッと見つめ、ぼそりと呟いた。
「・・・・・可哀想な人ね。」
「!!」
(俺が可哀想だと?今の俺はもう昔の俺じゃない!なのに可哀想だと?!)イリスは動揺していた。怒鳴られたり、なじられたりするのには馴れていたが、哀れみはイリスの中で、最も屈辱的だったからだ。
「俺が哀れだとでもいうのかー?!」
その瞬間、イリスの感情は高まった。皮肉にもイリスの怒りの感情が魔力を引き上げてしまったのだ。そして強固だったはずの結界が壊されてしまった。
「セレスティア!!」
後方にいたカイエルが慌てて、セレスティアを守るために走った。
(しまった!傍にいればよかった!)
「女ぁあああああ!!!俺に哀れみなど・・・許せん!!」
イリスには相当屈辱的であったようで、瞳の赤は怒りに燃えているようだった。
「どうせ俺は、もうどうにもならん!ならばお前だけでも道連れに!!」
イリスは手のひらに魔力の塊の玉を作り、それをセレスティアを目掛けて放った。
「・・・本当に、どうしようもない人ね。」
セレスティアは、イリスの放った魔力の玉を剣で受け止めた。
「返すわ。」
セレスティアは言いながら剣で受け止めた魔力の玉を打ち返したのだ。そして玉はイリスの腹部に直撃した。
「ぐはっ!」
イリスはまさか打ち消されるとは思わず、痛みの最中驚いていた。
「ば、バカな?!いくら番になって強化されたといっても、あの魔力を簡単に打ち返すなど?!」
イリスは混乱していたが、セレスティアは涼しい顔をしていた。
「そうね、できそうだなーって思ったら、本当にできちゃったわ。」
なんともあっけらかんと答えた。
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