201:動機
「本当に・・・すまなかった。俺がもっと早くにお前と出会えていれば・・・」
ヴェリエルはそういうとヒルダを抱きしめた。
「ヴェリエル・・・」
しかし、そこへ笑い声が聞こえた。
「あはははははは」
イリスの笑い声だった。
「気付くのが遅れたって?そりゃそうだ。なぜなら俺が認識阻害させていたからな。」
イリスのまさかの告白にヴェリエルとヒルダは驚きを隠せなかった。
「貴様・・・が妨害していただと?」
「番を魔王化へ導くには、過酷な境遇にすればするほどなりやすいのは、お前らも周知だろう?であればしない手はないからな。その過酷な境遇の途中に竜が現れてしまうと、都合が悪い。当然そこから助けようとするからな。だから番を認知できないように、認識阻害の魔法を使っていたのさ。そしてその番の女がとことん弱ったギリギリのところで、阻害魔法を解除して、番を認知できるようにしたっていうのが、事の真相ってわけさ。」
イリスは結界の中で下卑た笑いを浮かべ、真相を知った周りの者も怒りを隠せなかった。中でもヴェリエルは自分の番をあんな目に合わせたことを許せるはずもなく。
「き、貴様ぁあああああ!!!」
ヴェリエルは瞬時に魔力を放出し、その氷の刃はイリスに向けられたが、ヴェリエルの攻撃はイリスを閉じ込めている結界の前に尽く霧散してしまった。
「おいおい、何を忘れている?俺をこの強固な結界に閉じ込めたのはお前らトカゲモドキだろ?」
「くっ!」
ヴェリエルのはやり場のない怒りに、歯をギリギリと食いしばっていた。しかしその時、ヒルダはヴェリエルに寄り添い、諌めるように小さく首を横に振った。そしてイリスに向ける眼差しは憐憫を含んだものだった。
「可哀想な人ね。」
ヒルダに思いもよらないことを言われ、イリスは目が丸くなっていた。
「はぁ?何を言っている?」
「可哀想な人ね、と言ったのよ。」
「何を意味のわからないことを」
「私は知っているの。貴方がどういった仕打ちを受けてきたのか。」
「!!」
イリスはヒルダの「仕打ちを受けたことを知っている」という言葉に動揺した。
「何をバカな・・・」
だが、ごまかそうとしたが、すかさずアンティエルが確信に迫った。
「まぁ、妾も詳しくはわからんが、大方ハーフであることで、迫害を受けてきたのじゃろうな。」
「!!」
「あーそっか。エルフと魔人のハーフだもんね。すっかり忘れたけど、言われてみればそうだよね。」
ラーファイルは納得したように、拳を受け皿にした手のひらで打ち付けた。
「え?どういうこと?」
ハインツ達は意味が分からなかったが、ユージィンが説明した。
「つまりね、特にエルフという種族は、なかなか昔気質な種族で融通がきかないというか・・・まぁ簡単に言うと、閉鎖的で余所者は受け付けないってやつなんだよ。」
「つまり、もしかして村八分?な目にあったってことかしら?」
セレスティアもそこまで聞けば、何をされていたのか見当がついた。
「その通り。さっきも言ったけど、エルフは昔気質で融通が利かないところがあるからね。それにやるからには半端なくだろうから、きっと彼は幼少期かなり手ひどい目にあったんだろうと想像するよ。そして恐らく・・・」
ユージィンはイリスを見据え、
「今回の事の発端は、自身が迫害を受けたことによる、世界への報復ってところだろうね。スケールが大きくなって迷惑極まりないけどね。」
ユージィンは呆れたように、溜息をついた。
※次回は4/25の更新になります。
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