187:ヒルダの暴走~中編~
「お前らが!お前らが我の番を唆したのだな!!!」
ヒルダは結界から出て、その身には黒いオーラを纏っていた。そしてヒルダのすぐ目の前にいるヴェリエルには目もくれず、その後ろに立っていた『竜の祖』達らを睨みつけていた。そしてその後ろにエメリーネやセレスティア、ハインツはそれぞれの番の竜の背中に庇われる形で後ろに控えていた。
「違う!聞いてくれヒルダ。俺は、俺達はお前の魔王化を解除したいんだ。今なら間に合うから・・「うるさい!!!」」」
ヴェリエルは必死でヒルダの説得を試みるも、ヒルダは怒り心頭でヴェリエルの話を遮ってしまった。
「ヴェリエル、信じていたのに、お前を・・・お前は絶対に私の味方だと・・・信じていたのに・・・どうして・・・ひどい、ひどいわ・・・」
ヒルダは激しく怒っていたかと思えば、急にしくしくと涙を流していた。
「なんだか・・・情緒不安定なのかしら?」
ヒルダの様子を見て感情の起伏が激しいことから、セレスティアからそんな言葉がでた。
「そうね。急に負のエネルギーが爆上がりしたから、その影響で精神が不安定になってしまっているわね。」
「・・・イシュタルさん、どういう意味ですか?」
「魔王になるにも、それなりに順序があるからね。付け焼き刃で簡単になれる訳ではないのよ。だけど彼女、早く魔王になる為に龍脈のエネルギーをたくさん吸収しちゃったのよ。急に膨大なエネルギーをいっぺんにたくさん吸収してしまったから、彼女の中で全てを消化することができず、きっと無理をしていたのね。不安定だったんだと思うわ。だけどそこへ番であるヴェリエルに対して疑心暗鬼になっちゃったものだから、彼女の中ではいっぱいいっぱいで感情の制御ができなくなちゃったのよ。」
「・・・・それって、かなりまずくなりません?」
イシュタルから状況の説明を聞いて、改めてヒルダの様子をカイエルの背中から見ていた。ヒルダは目は虚ろで、何を言ってるのかは聞こえないがブツブツと独り言を言い始めていた。親指の爪をかじり黒いオーラを放出しているその様は明らかに異様であった。
「まずいわね。魔王になる前に彼女は力の制御できないまま壊れちゃうかもだわ。急いだほうがいいわね。」
「どうすればいいんですか?私できることならお手伝いします!」
セレスティアは初対面ではあるが、ヒルダのことは放っておくことは出来ないと思っていた。同じ番の立場であるからか、ヴェリエルの必死な様を見て、他人事には思えなかったのだ。ただ彼女に何が会ったのかは現時点ではわからない。魔王化するくらいだからきっと生い立ちで絶望するほど辛いことがあったのだろうとはわかる。
だがそれでも、だからといって全く関係のない人達に危害を加える正統な理由にはならないと、セレスティアは思っていた。
「セレスティアは悪いけど、ユージィンらと一緒に時間稼ぎをお願いできるかしら?その間に私達『竜の祖』で彼女を元に戻すための詠唱を始めるわ。」
「わかりました!」
「あまり女性をいたぶるのは好むところではないけれど、そうも言ってられないからね。ま、ともかく僕たちは時間稼ぎだ。セレスティア、ハインツ今の君たちなら僕のスピードについて来られると思う。援護を頼む。」
「「御意!!」」
「わ、私は後方で踊ります!」
エメリーネはこんな事態である最中に踊るという申し出をしたが、それにはちゃんとした理由があった。
「踊り・・・あ、そうか!」
セレスティアは思い出した。今や『女神の踊り手』の称号を持っているエメリーネの踊りには味方に支援効果をもたらすことができるからだ。
「なら、僕たちは彼女に被害が及ばないように、護衛をする。」
フェルディナント率いる騎士たちはエメリーネの護衛をすることになった。
「竜騎士は、飛竜に乗って後方支援に回ってくれ!」
「「「「御意!」」」」
ユージィンの指示により竜騎士達も飛竜に跨り、皆が臨戦態勢となった。
「何としても魔王化を食い止めなければいかん。それでは始めようぞ!」
アンティエルの声が合図となり、戦闘が開始された。
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