182:イベルナの最後
イベルナが魔王になってしばらく経った後のことだった。結局負の感情から闇に飲まれ魔王となったイベルナは、世界を呪い滅ぼそうと魔物を従え、各国に侵攻していった。だが当然各地もただ侵略される様を、指を加えて見ていたわけではなかった。対魔王にと勇者を探し出したのだ。伝承によると、魔王が出没した際にはその対となる勇者が必ず現れると伝えられていたからだ。その勇者は六属性の光闇火風土水のすべての魔法を使いこなすことができると言われ、まさに魔王を討ち果たす為の力が備わっていたのだ。
そして勇者を見つけだし、剣術や魔法や神官のエキスパートの仲間達と共に、なおかつラーファイル以外の『竜の祖』を伴ってイベルナこと魔王の住む居城へ行き着いた。そして結局魔王イベルナは現れた勇者一行によって、討伐されてしまった。そして致命傷を与えられたことで、奇しくも正気に戻ったのだった。
イベルナは勇者の剣と魔法によって倒れ、もう虫の息であった。そこへラーファイルが駆け寄り必死でイベルナの名を呼んでいた。
「イベルナイベルナ!!ごめん、俺が俺がもっと君をちゃんと止めていればこんなことには・・・」
ラーファイルは泣いていた。もうすぐ己の番の命の灯が消えようとしていたから。
「ラー・・ファイル、泣かないで・・・これは自業自得・・なの。仕方ないわ。だけどやっと自分に戻れて・・・良かった。」
イベルナは苦痛を伴うもラーファイルには必死に笑顔を向けようとしていた。
「ごめん、本当に・・・・」
ラーファイルは『竜の祖』で、本来なら魔王になった番を自らの手で果たさねばならなかったところだが、今のヴェリエルと同じく番を果たすことはできなかった。だが結局、自分以外の勇者側に付いてしまった『竜の祖』達と対峙することになるも、単純に数の上で姉弟達に勝てるはずもなかったのだ。
「ラー・・ファイルもし次に生まれかわって、また私が同じことをしてしまったら・・・絶対に止めて。お願い、二度とこんなことしたく・・・ないの。そして・・・早くもっと早く、貴方と出会えていれば・・・きっと私・・・できるだけ、今度は早く迎えに来てね・・・あぁ今度はこんなことにならないように男に生まれたなら・・・」
「イベルナ、君がなんであろうと絶対に見つけてみせるから!」
ラーファイルにはイベルナの言わんとすることがわかった。凌辱されたことが、今までの不満や悲しみを爆発させるきっかけとなってしまったことを。イベルナは自分が女でなければこんなことにならなかったのもしれないと後悔しているのだと。
「ラーファイル・・私を見つけてね・・・貴方は最後まで私に・・・あり・・・がと・・」
最後にイベルナは儚げに微笑んで、そしてこと切れた。
「うわぁああああ!!!俺が俺が!!もっともっと早くに見つけていれば!!」
ラーファイルは号泣した。番を早く見つけられなかったことに、番を失ってしまったことに、そして番を止められなかったことに自分を責めていた。
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