183:印の意味

 「それでね、僕は慌ててラーファイルの遠征先に向かったんだよ。そしたら嫌な予感が的中しちゃってさ。本人は自覚なかったようだけど、確かにハインツの様子がおかしかったんだ。でも、まぁ今回は僕が先に印をつけたのが早かったから、未然に防ぐこともできたんだけどね。対処もできたし大事にはならなくて、ホント良かったよ。」


 そういうとラーファイルは、安堵の溜息を付いていた。


 「ラーファイルが突然竜の姿で来たから現場では大変だったけどね。でかい竜が来たー新たな魔物だーとか大騒ぎになってたよ」


 ハインツはその時のことを思い出して苦笑いになりつつも嬉しそうではあった。


 「ところで、印をつけたって言ったけど、印ってどういう意味なの?」


 セレスティアはラーファイルの言う印の意味がよくわからなかった。 


 「えーあぁ・・・多分・・・」


 ハインツは、そのことを言っていいものか少し悩んではいたものの、不意にカイエルと目が合った。お互いしばし凝視していたが、カイエルが顔を赤くしながらそっぽを向いたので(あぁそういうことか)と、なら話しても問題ないだろうと思い、セレスティアに教えることにした。


 「えーとセレスティアは『竜紋』って知ってる?」


 とはいえ、ハインツも自分で言いながら赤面していた。


 「『竜紋』・・・って、あぁっ!」


 それを聞いてセレスティアも真っ赤になり、そしてわかったのだ。ラーファイルの言う印とは『竜紋』のことだということが。『竜紋』は『竜の祖』との性交渉を意味することから、まだ初心な二人は言葉にするだけで、顔から火が出るくらい恥ずかしい事だったのだ。


 「そ、そっか・・・本当に加護があるのね。」


 セレスティアは恥ずかしさのあまり取り繕うように言った、


 「う、うん、まぁそういうことらしいよ。」


  二人は恥ずかしさのあまり、その話題はさっさと切り上げることにした。


 「うんうん、とにかくハインツが前世の記憶に飲まれなくて良かったよ。」

 

 ラーファイルはニコニコと笑顔を浮かべ、イベルナとの約束がちゃんと果たせたことにラーファイルは心の中でイベルナに語っていた。


 (イベルナ、僕ちゃんと約束は守ったよ。絶対に君を、ハインツを魔王には闇に飲ませるようなことにはしないから安心してね。)

 ラーファイルは何となくイベルナが(約束を守ってくれてありがとう・・・)と言っているように感じていたのだ。

  

  

 



 「ま、それはさておきじゃ・・・」


 アンティエルは、結界に閉じ込めているイリスに冷ややかな眼差しを向けていた。


 「今回のことについてはお主がいろいろと画策していたようじゃがの、まずはそれを終わらせねばならん。お主の審判については後ほど問うぞ。いろいろ余罪はあるじゃろうからな。叩けばどれだけ埃がでるのか楽しみじゃ」


 「・・・・・」


 イリスは無言でアンティエルを睨みつけていた。

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