172:セレスティアの『竜紋』~前編~
セレスティアは、今まで経験したことのない感覚の中、自分の上にいるカイエルを見つめていた。
(あ・・・カイエルが、何か光って・・・?)
カイエルの身の上に何かしらの変化があったのはわかったが、それ以上に己の身体の感覚に引っ張られて、それ以降思考することはかなわなかった。
(お腹から温かくなってきて、身体全体に伝わるこの感じは一体・・・・)
そうして、セレスティアは意識を手放した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
セレスティアは気が付くと、草むらの上で裸のままカイエルに抱き寄せられていた。草は割と背の高く長さがあるので、遠目からは気付かれにくいのは幸いしていた。
「えっと、あの・・・」
「ん?」
カイエルはセレスティアの顔を覗き込むように顔を更に近づけた。
「その、さっき光ってたよね?・・・封印は解除できたのかなって・・・」
カイエルと契ったことで、カイエルの身体が光っていたように見えたのだが、セレスティアは自分の身体に起こっていることでいっぱいいっぱいであったことから余裕がなく、記憶が曖昧だったのだ。
「あぁ解除できた。セレスティアありがとう。これで全部の封印は解除できた。」
カイエルはセレスティアに笑顔を向けていた。その笑顔にセレスティアは堪らなくなって、ただでさえ情事の後で恥ずかしいのに、更に顔は真っ赤になっていた。
「そ、そうなのね。よ、良かったわ。」
そう言いながら、カイエルを見つめることに居た堪れなくなり、何とかカイエルから逃れようとしたが無駄な抵抗であった。カイエルはセレスティアを離さないと言わんばかりにがっちりとホールドしていたのだ。
「逃がさない。」
「た、ただ恥ずかしくて、その。っん!」
セレスティアが言葉を続けようとしたが、カイエルはセレスティアの口を己の口で塞いでしまった。そして、深い口づけが終わると同時にカイエルから新たな事実が打ち明けられた。
「セレスティア、まだ気付いてないと思うけど、自分の腹の辺りを見て。」
そういうとカイエルはニヤリと笑っていた。セレスティアは、意味がわからず、自信の身体をマジマジト見て、驚いた。
「え・・・何これ?模様が・・・これは竜?」
セレスティアは、驚いて上半身を起こし、自分の素肌に浮かび上がる模様を見た。しかし慌てて飛び起きたので、セレスティアの頭がカイエルの顎にヒットしていた。カイエルは痛がっていたが、セレスティアは自身の身体のことに集中していたので、それどころではなかった。腹部の辺りにうっすらと灰色で描かれた竜の模様が浮かび上がっていたのだ。
「それは『竜紋』。ようはお前は俺のもんだって証し。」
カイエルが顎を抑えながら、それがなんであるのか説明していた。
「竜紋・・・?」
聞きなれない言葉にセレスティアは首をかしげていた。
「そう『竜の祖』の番は竜と交わることで、この『竜紋』ができるんだよ。まぁさすがに初めてだから、まだ色は薄いけど、交わる回数が増えれば色がより濃くなるから。」
カイエルはうっとりした目でセレスティアを見つめ、セレスティアはカイルの言葉に余計に恥ずかしくなってしまった。
「回数って!!」
「真面目な話。セレスティアと交わることで俺の竜精が入るからな。『竜紋』は濃くなっていくんだよ。」
「これが、さらに濃く・・・?」
セレスティアは自分の腹部を撫でてみたが、模様が浮き上がってるだけで、特に皮ふに異常がないことはわかった。
「それにな、『竜紋』ができれば、俺の竜の加護がセレスティアに付与されるぞ。」
「竜の加護?」
「まぁ、言ってしまえば動物のマーキングに近いかもしれないな。俺の番ってことが、魔物に知らしめることになるから、それで大抵の魔物が襲ってくることはなくなるぞ。それ以外にもセレスティアの魔力値や身体能力が上がったりするから、なかなかお得なんだぞ?」
「え?これってそんなに凄い物なの?」
セレスティアは驚いた目で、再度自分の身体にある『竜紋』を見た。
「そういうこと。だからこれからは遠慮しねぇから。」
「なっ!」
カイエルはわざと意地悪な顔を向けて、セレスティアの反応を楽しんでいた。
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