163:ハインツとヒルダ
「水色の髪に赤い目の男・・・そうか貴様が」
ハインツは、イリスとは会ったのは初めてではあったが、ユージィンとセレスティアから遺跡の副官誘拐事件の全容は聞いていたので、イリスの事は知っていた。
「あぁ俺のこと知ってるんだね。まぁ同じ竜騎士だし、聞いていても不思議はないか。まぁそれはいいや。マスター残念ですが、同士は得られなかったようですね。」
イリスはハインツにさほど感心はなかったらしく、ヒルダに話かけた。
「そうだな。まぁ致し方あるまい。」
「・・・なら、今ここで殺してしまいましょう調度いいではないですか。この男も『器』でしょう?それに、あのいけ好かない男の部下だろうし、邪魔になるのは目に見えていますからね。」
イリスのその言葉を聞いて、ハインツは臨戦態勢をとった。そしてイリスは天雷弓をハインツに向けて照準を合わせていた。
「!!!」
イリスが弓矢を放たんと構えた時に、
「待て。」
「え?」
イリスはまさかヒルダが止めるとは思わなかったので、驚いていた。ヒルダはハンイツを見つめて、
「・・・まぁいい。戻るぞ。」
「え?いいのですか?」
『魔王の器』であるハインツをこの場で始末してしまえば、後々の事を考えれば楽なことは明白であったのに、なぜかヒルダはそれを良しとしなかったのだ。
「くどいぞ。」
ヒルダは頑として承知しなかった。
「それよりも、あちらが心配だ。・・・・境遇が似ているから、仲間に引き込めばと思っていたがそうならないのならば無駄足だ。さっさと向こうに行くぞ。」
「・・・」
イリスは引っ掛かるモノはあったが、マスターであるヒルダが言うのであればと逆らわず持っていた弓を下げた。
「わかりました。では、向かいましょうか。」
「あぁ。」
「お、おい待て!!」
一瞬呆けて、そのまま見過ごしそうになったが、ハインツは慌てて止めた。
「我が親切にも、この場は見逃してやると言ってやるのだ。だが今邪魔をするんであれば、容赦はせんぞ?」
グリフォンにイリスと共に相乗りしたヒルダはハインツを見下ろして、そう言った。
「・・・わかった。今のところ僕には不利な状況なようだ。無駄死にはしたくないからね。言う通りにしよう。」
ハインツはヒルダの眼差しを見て、本気度が伝わったので、今は深追いしない方がいいと判断した。そうしてグリフォンに乗って去っていくヒルダたちの最中を見送る形になってしまった。
(ヒルダ・・・とか言ったか。彼女は似たような境遇だと言っていた。ということであれば、恐らく彼女は・・・・)
ハインツは、今のヒルダが恐らく自分の前世と似たような目にあったのだろうと当たりを付けていた。もちろん全て同じではないだろうが、そう推測することはできた。
(魔王化か・・・なってしまった境遇には同情はできるが、当然そのままにしては置けないからな。)
ハインツはあの時前世を見せられてはいたが、魔王になったイベルナがどういった経緯で最後を迎えたのかはわからなかった。ただ伝承では魔王が栄えたいう記述は聞いたことがないことから、恐らく最後は殺されたのだろうと、想像に難しくはなかった。そしてヒルダが何故自分を見逃したのかは、考えても理由はわからなかった。
※次回は2/24(木)更新です!
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