161:イシュタルVSヴェリエル~後編~

 イシュタルにはやはり不利な戦いであった。

 イシュタルの竜の身体はところどころ凍っている状態になっていた。対するヴェリエルは、海の恩恵があることと、海が結界の役割も担っていることから、ヴェリエルはさほど傷はついていなかった。それにイシュタルは属性で不利なだけでなく、他にもイシュタルには不利な要因があるために、余計に苦戦を強いられていたのだ。


 『・・・姉君は相変わらず優しいな。』


 そしてヴェリエルはその事に気が付いていた。


 『一体何のことかしら?』


 バレているだろうとは思ってはいたが、敢えてイシュタルは知らないふりをした。  


 『後ろにいる人間を庇いながらでは、姉君は実力を発揮できはしまい。まぁ意地が悪いと自覚はあるが、俺もそれを利用させてはもらっているがな・・・』


 ヴェリエルはわかっていた。陸地を足場にしているイシュタルはできるだけ攻撃が自分の後ろの町にいかないようにと、身を挺していることに。その為にイシュタルはヴェリエルの氷のブレスを避けられずに、己の身体を盾にしていたのだ。港の住人たちが避難しきるまではと、耐えていた。


 『ふふ、我が弟ながら性格が悪いわね。それなら、攻撃の手を休めてくれてもよかったのに。』


 イシュタルは、憎まれ口を叩くも肉体的ダメージから少々息が荒くなっていた。


 『そうしたいのは山々だがな、姉君の番がドラゴンスレイヤーの所有者であることは知っている。俺とて、あの剣と真っ向から交えたくはないのでな。』


 『そう・・・やはりあの青い髪の男イリスと繋がっているのね・・・』 


 大方予想はしてたが、そうであって欲しくないことが確定してしまったことにイシュタルは悲しく思った。


 『貴方があの男に踊らされているとはね。』


 『俺もその点は不本意だよ。だが、番の頼みならば俺は拒めない。わかるだろ?』


 『・・・それでも、貴方は止めなければいけなかった・・・』


 イシュタルが言わんとするのは先程言っていた『魔王化した場合は番を殺さなければいけない』ということに、ヴェリエルは当然容認することなど、できないことから激高した。


 『くどい!!』


 その言葉と同時にまた氷のブレスがヴェリエルの口から放たれた。しかし・・・氷のブレスはイシュタルに当たる寸前で何かに弾かれ霧散した。


 『来たか・・・』


 ヴェリエルは、自分の発したブレスが霧散してしまったが、その理由が見当がついていたことから、動ずることはなかった。


 「僕のイシュタルに、これ以上傷を付けさせるわけにはいかないからね。」


 イシュタルの前には、ドラゴンスレイヤーを手にしたユージィンが立っていた。



※次回は2月21日の更新になります!


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