160:イシュタルVSヴェリエル~前編~
まずは港にいる人たちの安全を確保しなければいけないことから、ユージィンは各部隊に指示を出していた。やみくもに逃げ惑われては、イシュタルの戦いの邪魔にもなりかねないからだ。
「まずは、港にいる一般人に騎士団は避難指示を出せ。先頭に立って、先導としんがりにも騎士を配置。優先順位は女子供、そして年寄りだが、家族がある場合は父親も同列で構わない。あと竜騎士団は結界を張って町への津波を防ぐように。」
「「「「「はっ!」」」」」
「あと細かな指示は各隊長の指示に従うこと、恐らくこのどさくさに魔物の出現も予想される。そこは今まで培った経験を元に、各々の判断をして行動してくれ!僕はあの竜たちの戦いに参戦してくるから。」
まさか、ユージィンがあの竜たちの戦いに参戦するとは思わなかったので、その場にいる隊長たちは驚いた。
「だ、団長?!危険ではありませんか?・・それに・・・まさかイールが・・・」
何人かは、飛竜であるイールが本来の姿である『竜の祖』に変化したことを見た者もいた。隊長の一人であるシモンも驚きを隠せなかった。
「詳しいことは今は話せないが、イールは味方だ。それに僕の大事なパートナーなんだよ。シモン、君も竜騎士ならわかるだろ?」
「!」
シモンはユージィンがイールを大事にしてきたことも、苦楽を共にしていたことも昔から見てきただけに、ユージィンの言わんとすることがよくわかった。
「・・・団長わかりました。あの港に現れた青い竜が、ただの竜でないことはわかります。どうかどうか必ず、イールと一緒にご生還ください!」
シモンは、ユージィンとイールが無事に帰還できるようと、この言葉に嘘偽りはなかった。
「あぁ善処するよ。」
ユージィンは、少し微笑んでそういうと、皆が逃げる方向とは反対の海辺へ走っていった。
海辺の港では、海にいるヴェリエルと陸地のイシュタルが睨み合っていた。
『姉としては、弟におしおきしなくてはね。』
『・・・弟としては、それを姉君に言われるのは致し方無いとは、思っているよ。だが・・・姉君、時には正論が通用しない時がある。』
『・・・それが今だと?』
『わかるはずだ。番の懇願には逆らえない。』
『・・・そうね、気持ちはわかるわ。だけど、そうなった(魔王化)時は、殺してでも止めなければいけないのよ?』
それを聞いたヴェリエルは激高した。
『!!番を殺すなど・・・』
言うと同時に、ヴェリエルは口から、極寒のブレスを放った。
『できる訳がなかろう!!』
『くうっ!!』
イシュタルは瞬時に避けたものの、片方の羽の三分の一が凍り付いてしまった。
『!!』
この戦いはイシュタルには分が悪かった。海は水を司るヴェルエルの領域であるため、海辺の戦闘では、イシュタルは圧倒的に分が悪くなるのだ。イシュタルもユージィンもその事を知っていたために、できるだけ避けたい場所であった。
ヴェルエルは本来の力に加え海の恩恵を受けることで、さらに力が増していく。そして、もともと属性的にも水は火に有利属性であったために、できれば対戦したくはなかったが、ヴェリエルが今まで姿を現わすことがなかったことから、ユージィンもイシュタルもこうなることが避けられないのは大方予想はしていたのだ。
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