159:青玉の水竜ヴェリエル

 ユージィンの派遣先でそれは起こった。 港にいた騎士団の一人が慌ててユージィンのいる、ホルスト伯爵家の客間に入ってきた。


 「団長、巨大な竜が現れました!!海も津波が発生し、このままでは被害が!」


 




 「竜だ!!なんだあのでかい竜は?!!」

 「青い竜?!水竜じゃないのか!!」

 

 港で突如起こったソレは、海から大きな竜が現れたのだ。そしてその竜は・・・


 『キュー・・・(ヴェリエル・・・)』

 

 イシュタルであるイールが漏らしたように、それは『竜の祖』であるヴェリエルの竜の姿であった。ヴェリエルの竜の姿は、アンティエルとよく似ていて、角の形状は違えど、頭に角が生えており、両手はあるが、蛇のように長い胴体に足はなかった。そしてその背中の羽の形状は、アンティエルは鳥のような翼が背にあるが、ヴェリエルの背中の羽はカイエルと同じく蝙蝠に近い形の翼が二枚あった。そして青玉を連想する、青い鱗の美しい竜だったのだ。


 「はぁ、こっちは方面は嫌だなって思ってたけど、やっぱりそういうことか・・・」 


 ユージィンはホルスト伯爵家の客間の窓から、竜の現れた港を見ていた。そして珍しく苦々しい顔を顕わにしていたのだ。





 ヴェリエルつまりは水竜だが、現れた港から少し離れた高台にある伯爵の屋敷の庭にいる姉であるイールを見ていた。


 『姉君、もう察してはついているとは思うがそういうことだ・・・』


 ヴェリエルから念話が聞こえてきた。これは他の誰かに聞こえることはない、姉弟である『竜の祖』同士の会話なのだ。


 (だから、私達をここに来るように仕向けていたのね・・・そうね、ここでは私は不利だもの。だけど・・・)


 イシュタルもユージィン同様、海に面している場所は本当は来たくはなかったが、作戦上仕方なく来たものの、わざとここにおびき寄せられたのだと、ヴェリエルが現れたことで確信を得たのだ。


 『私も引くことはできないわ。それに貴方に魔王の片棒を担がせるわけにはいかないものね。』


 その時、イールから眩い光が放たれた。


 「な、なんだ?この光は?!」

 「伯爵の屋敷から光ってるぞ?!!」


 そして、光が落ち着いてその場にいたのは・・・

 紅玉の飛竜ではなく、紅玉の竜。その大きさは、港に現れた青い竜とほぼ同等の大きさ。しかしその形状は違った。赤い竜は、紅玉の鱗はそのままに、胴体は蛇のように長くはなく、ちゃんと足も付いており、しっかりと地面を踏みしめていた。そして長い尾とその背中には飛竜と同じように蝙蝠と似た羽があったが、羽の部分にはところどころ角のような突起が付いていた。頭からは二本だった角が4本になっており、飛竜の時よりも獰猛さが際立つ姿になっていた。


 「なんだ!あっちにも竜がいるぞーー?!」

 「飛竜?いや、デカすぎるだろ?!!」

 「一体なぜ、こんな田舎の港町で?!」


 二体の竜の姿を見た人々はパニックになっていた。


 『ユージィン!』


 「イシュタル、わかってるよ。こっちは任せて、戦いに集中してくれ!」


『竜の祖』の姿となったイシュタルはユージィンの言葉に頷き、ヴェリエルのいる港まで飛んで行った。飛んで行ったイシュタルの背を見て、これから起こる避けられない戦いに、ユージィンは、覚悟を決めたのだ。


 「イシュタル、僕もすぐに駆けつけるから。」





※申し訳ないです。昨日は用事がありすぎて、更新できずでした・・・( ;∀;)スミマセン という訳で、少しだけ早めにアップしましたm(__)m

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