【完結】竜騎士の私は竜の番になりました！

137：ハインツの前世～①～

　一方、ハインツが遠征に派遣された場所では異変が起きていた。

　「ほう、まさか前魔王に出くわすとはな・・・」

　「え？何を言って？君は一体？」

　ハインツの目の前に現れたのは、豪奢なウエーブのかかった金髪に桃色の瞳の女だった。

　少し遡ること＿＿＿

　ハインツもセレスティア同様に今回の魔物討伐に派遣されていた。ハインツはフェリス王国の東南東にある辺境の村、ビェリーク村に来ていた。

ビェリーク村は、辺境地ではあるものの、メルシャ村よりも人口が多かったせいか、被害はかなり大きく、セレスティアが派遣されたメルシャ村同様に、作物が荒らされたのは勿論のこと、村の民にも人的な被害が出ており、多数の死傷者がでていたのだ。

　「酷いな・・・」

　ハインツは村の作物を荒らされた状況や、ケガ人を収容している小さな診療所の様子をみて呟いた。

　「あぁ、スタンピードがこんなほぼ同時に各地で起きるなんてな。不自然だよ。」

　竜騎士の同僚で一つ先輩である、ヨナーシュも怪訝な顔をして、言い放った。スタンピードとは、魔物の群衆が押し寄せて来る現象のことである。だが聞けば一度だけではなく、ここ最近だけで、何度もスタンピードが起こったことなど基本的にはない。こういった現象が怒るのは、単発的なモノであるのが常であるからだ。

　「まさか・・・誰かが魔物を使役している？」

　ヨナーシュが、ぼそりといった言葉に、ハインツは驚きを隠せなかった。

　「そんな、バカなことが・・・」

　「いや、そうでもないぞ。俺歴史が好きでさ。結構いろいろと過去の事を調べたことがあるんだけど、実際に昔あったそうなんだよ。」　

　「魔物を使役することがか？」

　「あぁ、だけどそれは、よくない前兆でな。」

　「よくない前兆？」

　「あぁ、過去にあった例では・・・・魔王が復活する前触れだったらしいと記述されていたよ。」

　「魔王？！」

　ハインツは驚いた。魔王とは過去に記述があり、実際にあったことではあったようだが、ほぼ伝説のような存在である。

　「あぁ、風を操る竜を伴って各地を制圧していったけど、結局は勇者に阻まれて、魔王の野望は潰えたという訳だ。」

　「風を操る竜・・・」

　『そう。ハンイツは全然覚えていないんだろうけどね、魂の約束。だから俺は会いに来たんだよ。』

　ハインツは、動揺を隠せなかった。何故か急にラーファイルが出会った頃に言っていた言葉が不意に頭の中によぎったからだ。

　「お、おい、顔色が悪いぞ？大丈夫か？」

　「あ、あぁごめん。少し気分が悪くなったみたいだ。あっちの木陰で少し休んでくるよ。」

　「わかった。無理すんなよ。」

　「すまない。」

　診療所から出たハインツは木陰にある木にもたれながら、足を伸ばしていた。そして先程のことを考えていた。

　（昔の魔王が竜を伴っていた？それに風を操る竜？それって・・まさか・・・）ハインツは先程ヨナーシュから聞いた、魔王に伴う竜の話が気になっていたのだ。風を操るとは、まさにラーファイルが風を司る竜であったからだ。

　（いや、まさか偶然だよな？）ハインツは引っ掛かかっていた。先程急にラーファイルの言葉が頭によぎった言葉が、『約束』という言葉が引っ掛かっていた。

　「僕は・・・一体何を約束したんだ？」

　なんで僕は急にこの言葉を思い出したんだろう？今の今まで忘れていたのに。

　ハインツは訳がわからなかったが、そこで不意に女の声がした。

　「ほう、まさか前魔王に出くわすとはな・・・」

　「え？何を言って？君は一体？」

　ハインツの目の前に現れたのは、豪奢なウエーブのかかった金髪に桃色の瞳の女だった。