136:魔王化
セレスティアはカイエルに接近されて、顔を真っ赤にしたが、思考を冷静に戻した。
「カ、カイエル、番の由来は、わ、わかったけど、どうして今その話をしたの?まだ正直なところ聞いたばかりで頭の中はまだ整理できていないけど・・・」
情報量がいっぱいすぎて、実際セレスティアの中で考えはまとまっていなかったが、なぜカイエルが今その話をしたのかは不思議だったのだ。
「イリスにな、あいつの、ヴェリエルの匂いが付いていたんだ・・・」
カイエルは少し悲しそうな表情でそれを告げた。
「ヴェリエルって、確かカイエルの直ぐ上のお兄さんだったわよね?」
「あぁ。イリスにアイツの匂いがついていたということは、接触をしたことを意味している。」
「それは、どういう意味?」
セレスティアは聞いたものの、カイエルの話を聞いた直後の今では、既にセレスティアの中でも最悪の考えが浮かんでいた。
「あいつはわざわざ魔物を嗾けたこの村の様子を見にきただろ?ということは、俺の見解だが、恐らくヴェリエルの番は魔王化が始まっているんだと思う。」
「?!」
やはり!という気持ちと信じたくない気持ちとで、セレスティアはカイエルを凝視したままだった。魔王は実際何度か出現していると古文書には残ってはいるが、直近では数百年前の話なのだ。
「ま、まって、確かに魔王が出現した話は過去にもあったけど、やっぱりそれは・・・」
「そうだ。俺達『竜の祖』の中の番が魔王化してしまった、ってことだ。」
セレスティアは、魔王などという眉唾の話が、現実に差し掛かってきたことになろうとは夢にも思ってもいなかったのだ。
「俺達は、黄金期つまり『番』が世に出た時をそう呼んでいるけど、その時にはできるだけそう(魔王化)ならないように、一緒にいるように心掛けていた。まぁ、実際俺達にとって『番』はかけがえのない存在だからな。誰かに指図されなくとも勝手にそうなるんだけど。ただ先にも言った通り、突然に番の場所はわかるものだから、タイミングは俺達にもわからない。ヴェリエルの場合は、見つけた時は恐らく手遅れだったんだろう。」
「手遅れ?・・あ!」
セレスティアは先ほどカイエルが言っていた言葉を思い出した。『魔王の欠片』を持つ器である番は生い立ちが薄幸であることが多いと。
「わかったか。ヴェリエルの番は恐らく、何かしらで不幸な生い立ちだったのだと思う。それで、きっとヴェリエルが出会えた時には・・・己の境遇を嘆いて、世間を恨んでいたんだろうな。残念だけど、そういった気持ちが魔王になりやすい。」
「私は・・・そういう意味では叔父様に助けられたのね・・・」
思えば自分もそうではあったが、叔父であるユージィンが手を差し伸べてくれたことで、セレスティアは深刻な事態は回避できたのだと、思い返していた。
「あぁ、姉貴は割と俺達の中では早い段階で自分の番と接触できたみたいだし、それに・・・」
「それに?」
「ユージィンあいつは『覚醒者』だ。」
セレスティアもライモンド誘拐の時にイリスがユージィンに対して言っていた『覚醒者』という言葉はずっと気になっていた。
※すみませんが、年末年始の為、12/30~1/2まで更新はお休みとなります。1/3から再開となりますので、よろしくお願いします。
それでは、いつもご閲覧いただいている皆様、良いお年をお過ごしくださいね(^人^)
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