129:遠征③
とある屋敷にて___
「ふーん、一か所だけ変な村があるねぇ。」
イリスはディアナからの報告書を聞いて、メルシャ村が攻略状況を確認していた。
「はい、他については、計画通りに魔物を配置しましたが、メルシャ村には人的被害を及ぼすことはできませんでした。」
「・・・面白いね。見に行ってみようか?」
「え、行くのですか?」
この段階で、イリスが腰を上げるとは思っていなかったディアナは驚いた。
「何故そうなってるのか興味あるからね。それに今後何かの参考になるかもしれないしさ。」
「わ、わかりました。」
ディアナは、あれからもイリスと行動を共にしていた。利用されているとわかってはいるのに、それでも離れる選択をすることはなかったのだ。
「セレスティアはどう思う?」
ルッツは、セレスティアにいきなり切り出した。
「え?何のこと?」
「他の地域では、人も襲われているし、酷いところであれば魔物に襲われて村が壊滅しているところだってある。なのにここは畑だけですんで人に被害はない、ということにだよ。」
村長から説明はあったものの、ルッツはにわかには信じられないようであった。
「あ、あぁそういうことね。村長さんからの話の通りじゃないかと思うけど?」
「竜の加護ってやつかい?」
「えぇ、それしかないでしょ。実際被害に合ってないのだから。私は竜の加護を信じるわ。だって私達は竜騎士でしょ?」
セレスティアは実際に竜の番であるし、『竜の祖』とも親交があることから、疑う気持ちは当然ながらなかった。そして見てわかったのだ。このメルシャ村の各家にある竜の模様の中にある鱗が誰のものかということも。
「そっか・・・そうだな。竜騎士である俺達が竜を疑うなんてな。わかった、俺も信じるよ。」
ルッツは、セレスティアが疑う様子もなく、竜を信じている姿に敵わないなと思った。
「あとは、手分けして聞き込みをしておきましょう。」
こうしてこの日は、村に入った辺りで野営をすることになった。実際に魔物が襲いにくるかもしれないので、交代で寝ずの番をして、襲撃に備えることにした。
「聞き込みの結果、魔物は恐らくグレイウルフとだと思われます。」
セレスティア達の村の人々からの目撃情報から、グレイウルフだと結論づけた。グレイウルフは体調は2メートル以上あり、鋭い大きな牙を持っているのが特徴の魔物だ。だが動作はさほど早くはないものの、群れで行動することや、鋭い牙があることから、魔物ランクCに認定されているのだ。1匹であれば、Cにランクとはならないが、大抵は群れで行動することから危険視されている。※魔物ランクは基本的にA~Eまであり、Aになるほど、危険度が増していく。
「犬のようだったが、大きさは人間よりも大きいってことだから、間違いないだろう。」
セレスティアとルッツの先輩である、エイブラムもセレスティアに同意した。エイブラムは竜騎士のセレスティア班のリーダーであり、5年先輩の竜騎士で、すでに既婚者である。見た目は茶色の短めの髪に、口元と顎髭を生やしているせいか、実際の年齢よりは少し老けて見られることもしばしばあったが、本人はさほど気にしてはいない。
「あいつらは群れをなして行動しているからな。1匹いたら十匹以上いると思っていい。魔物は夜間に行動することから、我々の半分は見張りと休憩する者で半分での交代制でいく。そして飛竜を外側に配置しておく。魔物が近づけば飛竜が真っ先に察知してくれるはずだからな。もし異常を察知したら見張りの当番の内一人は寝ている者を起こしに行く。そして残ったものは引き続き状況を確認する。わかったな。」
「「「「はっ!」」」」」
こうして、エイブラムの指示のもと、当番を交代制で見張りを立てることになった。
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