127:遠征①

 「これは・・・」


 「ひどいですね・・・」


 「あぁ。」


 セレスティア達のチームは、魔物討伐をする為に遠征に来ていた。チームは全部で6つで編成されており、セレスティア達の同期は一部を除きバラバラに編成されていた。セレスティアはルッツと一緒ではあったもの、あとのメンバーは先輩であったり後輩とであったりと、5名の竜騎士でチーム編成されていた。竜騎士たちは全員甲冑に身を包み飛竜で飛んで来たため一足先に現地に到着していた。この場所で他の騎士団と合流予定であった。


 そしてここは、フェリス王国の北西にある辺境の地の『メルシャ村』で、実際の被害の状況を見るために、魔物に荒らされたという畑を確認している最中であった。広大な畑はメルシャ村の生活をする上での大切な食物であり、売り物でもある「メラス」という穀物が大部分を示していた。畑はあちこちに獣で履み荒らされた痕があったり食い散らかされていたりと、畑の規模が大きいこともあり被害額は多額となるのは、誰の目にも明らかであった。まさにメルシャ村の住人からすれば死活問題なのだ。そういった被害状況を村長より確認していた。


 「・・・このようにですな。もうすぐ収穫間近であったのに、突然魔物の大群に襲われてしもうての。幸い皆、部屋に閉じこもって鍵を閉めていたので、人的な被害は被らなかったのがせめてもの幸いではあったがのぉ。」


 村長は杖を付き、白い顎ひげを蓄えた老人の男性で、いかにも故老といった風貌であった。そしてそれは実際に話を聞いてみたら、その通りであったのだ。


 「・・・畑はこれだけの被害だったのに、人身的な被害はなかったのですか?」 


 セレスティアは村長の言葉に少し驚いた。このメルシャ村では、死者はでていないと報告は受けていたが、広大な畑にこれだけの被害が出ているにも関わらず、まさか怪我人でさえもいなかったことが不思議であったのだ。


 「ほっほっほっほっ、お嬢さん、いや失礼。竜騎士殿であったな。」

 

 「あ、はい、呼び名は何でもいいですよ。」


 セレスティアは実際呼び名にはさほど気にはしていなかったので、わかれば何でもよかった。


 「あれをご覧くだされ。」


 そう言って、村長が指差したところには、各家の屋根付近に模様があった。それは良く見れば、竜がまるで身体で円を象ったような形を描いてる模様で、その真ん中には何か石のようなモノが黒く光っていた。


 「これは・・・?」


 「そう。この村はの、はじめて開拓した500年前の時から、竜の守護がある村での。この印がある家には魔物は近づけないんじゃよ。じゃから家に籠っておれば安全なんじゃ。」


 魔物は基本的に夜に活動するものがほとんどだ。陽射しのある日中でも動けないことはないのだが、本来の活動時間である夜に比べれば、圧倒的に動きが鈍くなる。当然そんな状態で日中動けば自身の身を危険にさらすことになるから、そんな愚行は起こさない。それゆえ、魔物は暗くなった夜に活動しているのだ。だが、例外として陽射しを閉ざされた森の中では動くことはできる。ただし、あくまで薄暗い所だけなので、森の中でも陽射しの明るいところには魔物は出没しない。


 「500年前・・・?」


 セレスティアは500年前という数字に何だか、聞き覚えがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る