113:ショーンのやりたいこと
ジョアンナとソフィアはサロンから出され、ショーンはその場に残っていた。
「カイエル君、途中遮ってすまなかったね。」
「え、あーいや。別に」
「君はわざわざ阻害魔法をかけていたからね。あまり存在を公にしたくないのだろうと思ってな。」
セスは、カイエルが阻害魔法をかけていたことから、意図的にあまりカイエルという人物を公の場には出したくないのだろうと思った。
「あー、まぁそうですね。一応姉貴からも、5年過ぎるまでは個人的な場にはあまり出ないように言われてるので。出るときは阻害魔法かけておけって言われてたんでね。ま・・・俺は、そんな気にしちゃいないんだけど。」
イシュタルから、カイエルは言われていた。竜騎士の5年縛りがなければ、そんなことをする必要はないのだが、カイエルは何せ容姿で目立つことから、今は極力大人しくしてろとの姉からのお達しがあったのだ。セレスティアにいらぬ嫌疑が掛からないようにする為の予防線なのであった。
「なるほど。イシュタル殿は聡明なのだな。」
「そうね、誰かさんと違ってね?」
セレスティアはわざと意地の悪い顔を見せた。
「!おい失礼だろ!」
「あれ?でもそれなのに、なんでショーンはわかったんだ?」
ディーンのこの言葉に、全員がショーンに注目した。
「え・・・と」
皆からの視線を浴びて、ショーンは視線を泳がせていた。そこへカイエルがショーンと目線を合わせるためにしゃがんだ。
「へぇー俺の力が戻っていないとはいえ、俺の『阻害魔法』を見破るとは、なかなか素質ありそうだな?」
カイエルはショーンを見てニヤリと笑った。
「え?カイエルどういうことなの?」
カイエルは、ショーンの頭をポンポンとすると、セレスティアに向き合い、思ってもいなかったことを告げたのだ。
「あーこの坊主、かなり魔力あるよ。」
「え?」
「つまり、魔力量がかなり多い訳。だから俺の『阻害魔法』に引っ掛からなかったんだよ。」
セレスティアを初め、セスもディーンも驚いていた。
「カ、カイエル君、もしかしてショーンは魔法の才能があるということなのか?」
セスは身を乗り出して、聞いてきた。
「こんだけ魔力量が多いんだったら、かなり資質はあると思いますね。」
その言葉に、ショーンの目が見開いた。
「セ、セリス姉さま、話って言うのは実はそのことで!」
セレスティアはここまでの流れから、ショーンが何を言いたいのかわかった。
「ショーンもしかして・・・貴方、魔術師か神官になりたいのね?」
「はい・・・」
ショーンはモジモジとしながらも、はっきりと答えた。
「そうだったのか・・・」
セスは深いため息をついて、ソファに座った。
「すまんな、ショーン。ジョアンナからお前が文官になりたいって聞いていたから、てっきりそっち系だと思っていたのだが・・・」
ショーンは父セスの元に行き、
「父様、ごめんなさい。母様が父様が、僕が文官になって仕事を支えてくれるのを、すごく期待してくれてるって聞いていたけど・・・でも、僕は本当は神官になりたくて、なかなか言い出せなかったんです。ごめんなさい!」
そういうとショーンは身体を90℃に曲げる勢いで何度も何度も謝っていた。
「・・・ショーンすなまない。私の方こそ、忙しさにかまけて、人任せにしてしまったことが悪かったね。ちゃんと私が直接聞けば良かった。すまなかった。」
セスもショーンに頭を下げていた。
「もーお父様、そういうとこ全然変わってないのね。」
セレスティアは呆れ口調で、セスを軽く攻めていた。自分の時がそうだったので、余計に思ったのだ。
「セレス姉さまは女の人なのに、竜騎士になりたいって夢を適えたでしょ。僕はセレス姉さまとはあんまり会えてなかったけど、それでも会えた時には優しくしてくれたし、遊んでくれたことがすごく嬉しかったんだ。それに・・・ソフィア姉さまや母さまに何を言われても、絶対に竜騎士になりたいって夢を諦めなかったセレス姉さまをずっと尊敬してたんだよ。」
ショーンは幼いながらもちゃんと見ていたのだ。セレスティアがジョアンナやソフィアから嫌味を言われても決して意思を曲げず、自分の夢を適えたことに。セレスティアはなんだかこそばゆい気持ちになっていた。
「・・・そうだったのね。まさかそんな風に思っていてくれていたなんて、知らなかった。ありがとうね、ショーン。私は貴方の夢を応援するわ。」
セレスティアが照れ臭そうにそう言うと、ショーンはパアっと明るい表情になった。
「セレス姉さまありがとう!」
「ふむ、そういうことなら教育方針を変えないといけないな・・・」
今までは文官になりたいと聞いていたから、魔法系の教科は学んでいなかったのだ。
「父上、魔法なら、専門の学校に通わせた方がいいのではないですか?」
「あぁ、確かにそうだな。」
騎士学校があるように、魔法を専攻する学校があるのだ。
「そんな学校があるなら、僕行きたいです!」
ショーンは話に食いついた。
「だが寮になるぞ?母様やソフィアとは離れて暮らすことに成るがいいのか?」
「大丈夫です!僕魔法を勉強したい!」
そう言ったショーンの目はキラキラしていた。
貴族が通う王立学院があるのだが、それ以外に騎士に特化した学校もあれば、魔法に特化した専門の学校があるのだ。セレスティアとディーンは勿論のこと、セスも騎士学校の出身で、ジョアンナとソフィアは王立学院に通っていたのだ。ジョアンはショーンに危ない目にあってほしくないという親心から、騎士学校に通わせるつもりはなく、文官にするつもりで、セスにはそのように話していたのだ。ショーンは母ジョアンナがそんな調子だったので、本来の自分のやりたいことが中々言えず、セレスティアに相談をしたかったのだ。
「ま、うちは代々騎士の家系だ。少々のことで根をあげたりしないだろう。な、ショーン?」
「はい、兄さま!」
ショーンは、トコトコとカイエルの傍に行き、深々とお辞儀をした。
「え、とお兄さんありがとう。お兄さんが僕の魔力の事をいってくれたから、僕自分のやりたいことができるようになりました!本当にありがとうございました!」
顔を上げたショーンは満面の笑みだった。
「ふふ、ショーン良かったわね。」
「坊主、俺に感謝しろよ?」
「はい!」
カイエルは腕を組んで偉そうだったが、確かにカイエルがショーンの魔力量に気が付いたからこそである。ショーンがかつての自分のように、やりたいことができるようになって良かったとセレスティアは心から安堵し、その光景を微笑ましく見ていた。
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