74:すみませんが、ビビッとくるものはなかったです。
「うっ、うっ、ぐすっ」
話を終えたイシュタルはセレスティアが泣いていたので、慌ててハンカチを渡した。
「エレノアが、カイエルが、可哀想ずぎで!ぜっがぐ両想いになれだばっかりだったのに!ごれがらって時に、うっうっう~~」
セレスティアの言葉に、イシュタルとアンティエルは顔を合わせ、少し困った表情をしていた。
「えーとね、今の話を聞いてビビッとくるものはなかった?」
「がわいぞうでず!」
セレスティアはズズっと鼻をすすり、鼻声になっていた。
「えーと、まぁそうなんだけど、そういう事じゃなくて」
ラーファイルが言い淀んでいると、
「ふーむ、実はのぉ、エレノアはお主の前世なんじゃよ。」
アンティエルはズバッと言ってしまった。
「え?」
セレスティアは聞き間違いかと思った。
「だからね、エレノアはセレスティアの前世なのよ。」
イシュタルも同じことを告げた。
「え、え、えーーーー!!!」
セレスティアは驚いた。まさか自分に関係しているとは、微塵も思っていなかったからだ。
「まぁ、仕方ないんじゃない?大抵は覚えてないからね。」
ラーファイルが言うと、
「そうだね。覚えてる方が稀だし。前世とはいえ、エレノアとセレスティアは個々としては別物だ。魂は一緒だけどね。」
ユージィンが何てことないようにいった。
「えっ。じゃ、私の前世って、あのカルベルス王国の滅亡に関係しているというか、モロに引き金になったというか・・・」
「えぇ、その通りよ。」
イシュタルはいい笑顔で、肯定した。
「うそーーーーー!!!」
セレスティアは出ていた涙が驚きすぎて止まってしまった。
「だから、話を聞いて何かこうビビッと来るものがあるかなって思ったのだけど・・・」
「いえ、ないですね。」
セレスティアはきっぱり言った。実際、大昔の他人の話だと思って聞いていたのだ。
「フム、まぁ先にこやつの言った通りで、覚えてる方が稀じゃなからな。覚えていると前世の記憶に引っ張られてしまうことがあるからのぉ、覚えていない方がいいじゃろうて。」
セレスティアは何となく、アンティエルを言わんとすることが理解できた。
「どうかな?カイエルを説得できそうかい?」
ユージィンはセレスティアに聞いてみた。
「んー、正直、自信はないですね。でも・・・」
「でも?」
「取り敢えず、会ったらひっぱたく予定です。」
セレスティアは少し怒ってた。
「え?なんで?」
ラーファイルは予想外の回答に驚いた。
「だって、私は竜騎士です。その相棒たる、飛竜はカイエルなんですよ。」
「まぁ、それはそうだけど。」
「だから、職務怠慢です。」
「そこ?!」
ラーファイルを初め、イシュタルもアンティエルも驚いていた。
「勿論です。竜騎士の相棒として、社会人として許されません。だって、それでお給与もらっているんですよ?突如いなくなるなんて職務怠慢、いえはっきり言って無断欠勤です。やたら長生きしてるくせに、やってることはてんで子供ですね。」
セレスティアの言葉に容赦はなかった。
「ぶっ、あはははっあははははっ!」
たまらず、ユージィンは大笑いしていた。それを見て、イシュタルはギョッとしてた。
「叔父様、笑いすぎです。」
セレスティアはじろりとユージィンを睨んだ。
「ごめんごめん、うん、セレスらしいなって思ってね。」
「そういう訳で、カイエルの事情は把握したので、迎えに行きたいと思います。」
「いいけど、どうやって?」
「お三方なら気配とかで、カイエルの居所はわかりませんか?わからないようでしたら、迎えに行くのは無理なので、したくはないけどある方法でおびき寄せようかと思っています。」
「んーいなくなってからずっと気配を辿ってははいるのだけれど、どうも意図的に気配を断っているようで、今のところわからないのよ。ちなみになんだけど、おびき寄せるっていうのはどういった方法なの?」
イシュタルは何となく、嫌な予感がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます