73:カルベルス王国の滅亡~⑮~(過去編)
「ぐぁああああああ!!」
多勢に無勢で、カイエルはカルベルス王国では、人間相手であった故に一方的優位ではあったが、同じ『竜の祖』が相手では、そう簡単にはいかなかった。カイエルは様々な魔法で攻撃されていた。
「ぐっ!!くそっ!」
カイエルは、攻撃を受け、ボロボロになっていた。
「もう一度問おう。カイエルもうやめるのじゃ。お主が姉弟の中では一番力が強いのは周知のところじゃ。じゃが、さすがに5対1ではお主に勝ち目はないのはわかったであろう?どうじゃ悔い改める気にはならんか?」
「何度言われようと、俺はこんな世界も次の番もいらねぇんだ!!!」
だが、カイエルは頑なになっており、姉アンティエルの言葉を受け入れなかった。
「カイエル、お願いよ。バカなことを言うのはやめて!私達も弟である貴方を傷つけることも封印もしたくはないのよ。」
イシュタルは懇願したが、今のカイエルは聞く耳を持たなかった。
「くどい!!」
「・・・やはり、お前は・・・引っ張られているようだ。両姉君、これ以上の切言は無用かと。」
ヴェリエルは、今のカイエルには何を言っても無駄だと判断した。
「そうか・・・もう言うまい。残念じゃ。盟約によりお主を封印する。」
アンティエルは.目を伏せ、悲しいそうな表情をした。そして拘束魔法の呪文を唱え始めた。
カイエルは、姉弟達から魔法で拘束されてしまった。5人から放たれた拘束魔法でカイエルは全身を魔力でできたロープのようなもので拘束されてしまい、身動き取れなくなってしまった。そして次は封印をする為に、アンティエル達は封印の呪文の詠唱をした。
『『『『『竜縛封鎖』』』』』
五人が呪文を終えると、カイエルの身体は青い光の玉に包まれた。
「くっ!!解きやがれ!!」
だが、カイエルはそれでも悪態を付くことをやめなかった。
「可哀想だけど、しばらくは大人しくしているのね。」
イシュタルはカイエルを憐れんでいた。
「ん~、ちょいとお痛が過ぎたねぇ。」
ラーファイルは残念そうな表情をしていた。
「ま、しばし反省することだな!」
ダンフィールは、今のカイエルの態度では、封印は妥当だと考えていた。
「カイエル、貴方が『番』を見つけた時に解呪してあげるわ。」
イシュタルは、封印解除の条件を提示した。
「うるせぇ!そんなもの俺には必要ない!てめぇら!覚えてろよ!!」
「おーおー、吠えるねぇ。」
ダンフィールは少し茶化すように言った。
「カイエル、さすがに目に余る。しばらく反省してただの『飛竜』として過ごすといい。」
ヴェリエルは淡々と言い放った。
「貴方が、『番』を見つけられたら、封印は解けていく。それまでは・・・」
「くそ!このバカ姉貴!アホ兄貴ども!覚えてろよ!!!俺は絶対に許さねぇ!」
「いくら吠えたところでねぇ・・・」
カイエルには、今しばらく時間が必要であろうとダンフィールは思っていた。カイエルは眠気でフラフラになっていた。
「そろそろ意識が無くなってくるんじゃないかなぁ?」
「しばし眠りなさいな。そして二度と同じ過ちはしないで。」
イシュタルは言いながらも実は悲しんでいた。何せ、一番可愛がっていた弟であったのだから。カイエルは意識が保てなくなってきていた。だんだんと目を開けてはいられなくなり
「ぐっ・・・う・・・くそ・・・くっそう!!!」
カイエルは屈辱にまみれていた。今はカルベルス王国だけでなく、姉兄までもが憎悪の対象となっていたのだ。
「カイエル、貴方は間違ってはいないけれど、間違ってしまったの。きっとこの言葉の意味をいつかわかってくれると私は信じてるわ・・・」
イシュタルは願っていた。どんなに時間はかかってもいずれ番と出会うことになる。その時には、同じことが起こらないようにと。
そうして、カイエルの意識は深い深層心理へ閉じ込まれることになってしまった。
「カイエル、封印は3つじゃ。まずは『番』を見付けるのじゃ。さすれば封印は次々に解けていくであろう。・・・もう聞こえてはおらぬか・・・」
五人は、カイエルの身体が青い光の玉の中で、飛竜に変化していくのを見届けていた。
「カイエル、次にあいまみえるのは、何年後かのぉ・・・」
こうして、カイエルはそれから番を見つけるまでの500年の間、飛竜として生きてきたのだ。
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