第3話 宿題教えてもらってもいいですか?
15分程、全集中し、一気に問題を解いていく。しかし、最後の難問につまずき、手が止まる。
「どうするか……」
「ん? 何をどうするの?」
「実は最後の問題が難しくて……ってえぇ!?」
独り言に返事がきたので、びっくりして顔を横に向けると、そこには
「なんで朱莉がここに!?」
「なんでって……
「ソ、ソンナコトナイヨ?」
「分かりやすすぎか!」
「ソンナコトナイヨ?」
「2回連続同じ返しはちょっと……」
マジトーンで返された。ぴえん。
「まあいいや。それで、最後の問題が分からないんだっけ?」
「あ、そうそう! 教えてくれない? 朱莉なら頭良いし教え方も上手いから!」
朱莉は一見成績が悪そうだが、この前の定期テストでも20位以内に入っていて、美咲程ではないが、実は勉強ができる。
「そ、そうかなぁ? うん、じゃあ教えてあげる!」
朱莉は少し頬を赤らめながら言う。
「サンキュ! それでここなんだけど……」
「どれどれ〜」
朱莉が椅子を引いて立ち、俺の真後ろに来て、俺の肩に手を置き、覗き込む。
顔近っ!? まつ毛長っ!? むっちゃいい匂いっ!? てか、背中になんか柔らかい感触が!?
朱莉、意外と胸が大きい。これは着痩せするタイプだな。ふむふむ。
って! そんな事よりこの状況をどうにかしなければ! 彼氏彼女の関係でもないのに距離が近すぎて絶対に集中できない!!
俺が動揺して、やりづらそうにしているのに気づいたのか、朱莉は横にはけ、机の上に両手を組んでその上に顔を乗せてしゃがむ。
こういう時、朱莉は察しが良くて助かる。
「じゃあ、教えるね! まずは……」
朱莉が俺の分からないところを丁寧に説明してくれる。LINGというメッセージアプリで何度か質問した時にも感じたことだが、朱莉は人に教えるのが上手い。相手の苦手な部分を見極め、その人に合った教え方をしてくれる。
「そしたらこれを代入して終わり! どう? オッケー?」
「むっちゃ分かりやすかった。ありがとう。やってみるわ」
俺は朱莉に教えてもらった事を使いながら問題に取り組む。自分でもびっくりするくらい、さっきまで難しかった問題が簡単に感じ、スラスラと解ける。すごく気持ちが良い。そして無事に問題を解き終わる。まだ気持ちが良いな。朱莉に感謝を伝えるために横を向こうとしたが、
「朱音、ありが……」
"グニッ"
「あっ刺さった」
「痛っ」
どうやら俺が集中している間、人差し指で頬をプニプニしていたようだ。どうやら気持ち良かったのは気分だけじゃなく、物理的にもだったらしい。
「ごめんごめん。昨日爪切ったから平気だと思ったんだけど……大丈夫?」
「うん。平気だよ」
俺は平然とした表情で言う。しかし、正直に言おう。地味に痛い。みんなも分かるだろう? 何気に伸びている爪より切られたばかりの爪の方が痛いの。
と言うか朱莉また俺の身体触ってたな……肩の次は頬か。何故だろう、やはり距離感が近い。何か理由があるのだろうか。
「本当に平気?」
「お、おう」
いや、もう理由とかどうでもいい! とにかく上目遣いが可愛すぎる!! 何これ抱きしめたい!! でも男子がやったらわいせつ罪で捕まるからな……
ってだからそうじゃなくて! ハッ! もしかして朱莉も急にこのような衝動に駆られるのかもしれない。
でもそんな訳はないよなぁ。何故ならどこにも欲情する要素なかったしな。思春期の男子高校生じゃあるまいし。でも女子の方が性欲強いって言うしな……うーむ。
「どうしたの?」
そう言われて、俺は朱莉の身体を触ってくる行動に理由があるのかを聞くかどうか迷う。普通にデリカシーないし。だが、意を決して聞いてみるか。
「あ、あのさ……」
「う、うん」
俺の緊張が伝わったのか朱莉の表情にも緊張が走る。
「あ、朱莉は……」
「う、うん……」
ごくり。俺と朱莉が唾を呑む音が聞こえる。一度大きく深呼吸をし、心を落ち着かせる。
キーンコーンカーンコーン
「ヤバいよ真人! 時間だよ! 提出しないと!」
「お、おうそうだな」
2人でプリントを持って急いで教室を出る。
結局その日は、朱莉に理由を聞くことができなかった。
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